「これから、ロールプレイをやって頂きます」
Y大学院の受験会場で、筆記試験に続いて行われた口頭試問。
これでもかとばかり意地悪な質問を続けた男性教官が、唐突に宣言した。
「不登校気味の中3女子が、親に言われて渋々面接にやってきた、という設定です。あなたはスクールカウンセラー役を」
(は? 心理面接って、入学してから実習で教わるんじゃないの?)
有無を言わさず、すぐに場面スタート! ドアを開けて入ってきたのは、中年の女性教員。ふてくされた顔でおし黙ったまま、目を合わせようともしない。
反抗期の中学生「A子」になりきって、迫真の演技を繰り広げる。
数人の面接官が、じっと私を見つめている。
(い、いったいどうすれば…)
「はい、そこまで!」の声がかかるまで、何分が経過していたのか、そして自分が何をしゃべったのか、まったく記憶にない。
(支離滅裂…しどろもどろ…ダメだこりゃ)
臨床心理士の受験資格が得られる心理系大学院は、県内にS大学1校だけ。去年、独学で入試に挑戦したが、秋季試験も春季試験も落ちた。春季試験の倍率は10倍だった。
ひとりで勉強するのも心細いので、今年は予備校に通った。
そして、自分がどんなに能天気だったかを知る。
ライバルは、みな心理学部の現役4年生。そして、入試問題は全問が論述形式。まぐれ当たりが期待できない上、大学院によって「精神分析」「行動主義」「人間性心理学」など学派が異なるので、学校別の受験対策が必要だという。
例えば、精神分析派の教授が仕切る大学院を受験して、うっかりフロイトの理論を批判する論述を書こうものなら、一発でレッドカード退場!なのだ。
心理学初心者の社会人が何も知らずに出向けば、まず100%返り討ちに会う。
「一校受験はとても危険です!」
予備校のカリスマ講師・ミヤガワ先生に諭されて、今回はギリギリのタイミングで、隣県のY大学院にも願書を出した。ろくに学派も調べずに。
そして結果は…
面接で和気あいあいだった本命S大学院は、またもや不合格。これで3連敗だ。
そして、悲惨なロールプレイを演じたY大学院からは、まさかの合格通知が。
「2年越しの片想いの相手(Sちゃん)に3回告白してフラれ、通りがかりにナンパしたYちゃんには、出会い頭に愛されちゃいました」
とミヤガワ先生に報告したら、
「いい例えですね」と褒められた。
貴重なご縁を頂いたY大学院に、お世話になろうと思う。
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| Nagoya City Museum of Art, 2025 |

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