2025年8月15日

逃げ腰スクールカウンセラー

 

中学校のスクールカウンセラーの相談室に、3年生の女生徒がやってきた。

そして突然、軽い調子で

「先生、実は生理が遅れているんだけど、やばいと思う?」と聞いてきた。

12月の初めに知り合った男の子と実はセックスしちゃった。コンサートに行って知り合った子で、本名もどこに住んでるのかも知らない」とのこと。

父子家庭で父親は仕事が忙しく、夜遅くまで帰って来ない。

「パパには絶対話さないで。担任にも話さないで」という。

「もし妊娠していたら、あなた一人ではどうにもならないよ」というと、

「テレクラで金のありそうなおじさんと知り合って援交して、お金をもらっておろす」という。

【あなたがスクールカウンセラーだったら、この生徒に対してどのように対応するか。30分、600字以内で答えよ】

 これは先日、名古屋の心理系大学院予備校で出された問題だ。

「事例問題」といって、大学院入試でよく出るスタイルらしい。

この設問も、実際に東京の某女子大学院で過去に出題されたものだ。

もし、本当に女子生徒からこんな告白されたら?

自分なら、大パニック間違いなし。

女性の養護教諭を探し出して、3秒でバトンタッチしたい。

でも、受験本番で答案用紙にそう書けば、3秒で不合格になる。

大汗かきながら、なんとか600字は埋めたが、支離滅裂な答案になった。

帰宅後にテキストの模範解答を読んだら、プロはこのように対応するらしい。

・早急な対応が必要で、受容・共感的なカウンセリングだけをやっていればよいケースとは異なる

・まず援助交際や不特定多数との性行為など、これ以上自分を傷つけないようにすることを要請する

・中絶に伴う困難、出産する場合の困難などの情報を伝える

・産婦人科はハードルが高いので、市販の妊娠検査薬の使用を勧める

・カウンセラーだけでの対処はあり得ない。養護教諭や担任、場合によっては児童相相談所や医療機関とも連携し、チームで対応する

・「あなたにとって一番良い方法を一緒に考える」というスタンスを堅持して、様々な関係者との連携を模索するための下地作りをする

 

ちなみに、この生徒には「躁的防衛」が見られ、「超自我的な抑制」が弱く、親子関係の不全が根底にある「境界例的心性」が想像される、とのこと。

かろうじて、「養護教諭との連携」だけは正解だったけど…

大学院合格への道のりは、かなーり険しいね。

Nagoya Japan, august 2025



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