2025年1月17日

「しょせんは漫画家」

 

小学校時代の同級生に、その後音大を出て漫画家になった人がいる。

コンクールで優勝するほどのピアノの達人なのに、「音楽は親が勝手に敷いた路線。私は私の道を行く」と、音大在学中に漫画家としてデビューした。

「天は二物を与えず」なんて、大ウソじゃん!

世の中、不公平にできている。

とはいえ、漫画家というのは、かなり大変な職業らしい。

日経ビジネス電子版に載ったヤマザキマリさんのインタビューが面白かったので、一部を紹介します。

2010年に『テルマエ・ロマエ』の映画が大ヒットした時、映画の興行収入60億円に対して、原作者の私に支払われる原作料は100万円だった

・イタリア人の夫からは「自分が原作の映画が大ヒットしているのに、その利益の外に置かれているのは、君が事前にきちんと契約しなかったからだ」と詰め寄られ、家庭不和になった

・現場はいまだになあなあ。漫画家や作家が出版社に「これ、最初に契約書ください」と言えているかと言ったら、言えていない

・昭和一ケタの母には、私が漫画家になったことをなかなか受け入れてもらえなかった。「漫画なんて下劣」と思っていた人は彼女の世代では少なくない

・私はイタリアの美術大学で油彩、美術史、古代西洋史などを学んできたが、海外でも日本でも、漫画家だと名乗ると、お絵描き一辺倒で生きていけてるラッキーな人、と急に目線を変えられてしまう

・漫画作品を生むというのは、並大抵な気合では太刀打ちできないほど力が必要な作業。プロットを描いてから清書にいたるまでの労働時間を割ったら、おそらく学生のアルバイト時給くらい

・そうやってエネルギーを駆使して作品を描き、その作品がヒットしたとしても、「しょせんは漫画家」という意識が出版業界に漂っている

(以下は、近年のオーバーツーリズムについての発言)

・かつて京都に留学していた息子が久々に戻ってみたら、大学の帰りに寄っていたカフェで好き勝手に騒いでいる外国人がいる。変なたばこの匂いもした。京都に来ている外国人の様子が違ってきている、といっていた

・昔は京都といったら、確かに観光ではあるけれど、日本に興味を持つレベルの人たちが来ていた。今では日本がどんな国なのかもろくに知らず「安くて楽しいらしいよ」というノリだけで訪れる外国人が増えた

・外国人たくさん来て何が悪いのさ、と反論したくなる人もいるだろうけど、世の中にはそれが向いている国とそうじゃない国がある

(以下、ガルシア・マルケス「百年の孤独」の文庫版化について)

・知性というものは、本を読んだり、ひたすら勉強をしたりしていれば得られるものではない。物理的な意味でも精神的な意味でも、積み重ねてきた経験に、書物などで習得した教養が、時間をかけて結合して生まれてくるもの

Tateshina Japan, winter 2024-25


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