一本の映画を見に、「特急しなの」で名古屋まで行ってきた。
かな~り地味な映画のはずだが、小ぢんまりした館内は満席。
急きょ、通路にパイプイスが並べられた。
100分間の上映が終わり、エンドロールが流れて、画面は真っ暗。でも、館内も真っ暗なまま。
まさか、映写技師が居眠りでも…?
数分待って、やっと明かりがともる。余韻を胸に、三々五々、出口に向かう。
最後に出ようとしたら、誰かのスマホがひじ掛けに置きっぱなしだ。
足元にも、A4サイズのノートPCが入った手提げが転がっている。
「これとこれ、誰のですか~⁈」
お客さんの後ろ姿に向かって、大声を出す羽目になった。
もしここがパリやロンドンだったら、ものの3分で持って行かれちゃうよ。
あっという間にSIMカードを抜かれて、転売されて終わりだよ。
200万都市・名古屋の住人は、かな~り緩い人たちみたい。
この時見た映画のタイトルは、「どうすればよかったか?~言いたくない家族のこと」。藤野知明監督によるドキュメンタリー作品だ。
ある日、頭脳明晰で大学医学部に進学した姉が、突然、支離滅裂なことを叫び始める。
「統合失調症」が疑われたが、医師であり研究者でもある両親は、それを認めようとしない。
精神科への受診から、姉を遠ざけた。
姉の精神状態は、日増しに悪化した。罵詈雑言を叫び、奇異で突飛な行動を繰り返す。
ついに両親は、玄関に南京錠を掛けて、姉を自宅に閉じ込めた。
映像制作の道を選んだ弟(藤野監督)は、両親のその判断に疑問を覚えながら、姉と両親にビデオカメラを向ける。
以後20年間、社会から隔てられた家族の姿を記録し続けた…
統合失調症は、以前は「精神分裂病」と呼ばれた。
19世紀までは「早発性痴呆」というすごい病名がついていた。
昔から世界中に存在する病気だが、発病の原因は、いまだわかっていない。
私にも、統合失調症と診断され、障害者手帳を頼りにひとり暮らしする友人がいる。たまに会ってランチするが、とてもきちんとした人だ。
むしろ、心にとてもピュアな面がある。会うたび、それと比べた自分の俗物ぶりを思い知らされる。
映画では、発症して数十年後にようやく精神科の治療を受けた姉は、投薬で劇的に回復する。やっと訪れた平穏な日々。だがそれも束の間、姉の命を脅かす出来事が起きる。
「どうすればよかったか?」 この言葉が、胸に突き刺さってくる作品だ。
Nagoya Japan, January 2025 |
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