2024年8月30日

ウン〇は漏らしても、子は宝

 サマーキャンプ3日目の、爽やかな朝。

1年生の男の子が「パンツの中にうんちしちゃった~」と、いきなり爆弾発言! 大慌てで替えのパンツを探して彼のリュックを漁ると、中からオムツの束が出て来た。

オムツ交換までぼくらがやるのなら、追加料金もらいたいよな~

そんなハプニングはあったものの、今年も150人全員、無事に親御さんの元に返すことができた。うんちは漏らしても、この国にとって、子は宝である。

 

ビジネス・ブレークスルー大学学長の大前研一氏が、「国家滅亡級の少子化が進む根本原因」と題してプレジデント・オンラインに寄稿している。

御年81歳の大前さん、相変わらず冴えてる~! 一部を紹介します。

・戦前の日本では、きょうだい10人という家庭が珍しくなかった。子どもをたくさん産んで早く働かせようとした。子どもは家計を支える労働力だった

・今、子どもは親の生活を支える存在から、自分の将来のために親の金を使う“金食い虫”に変わった。子どもが投資対象になれば、産む人数を絞って一人当たりの投資額を集中させた方が有利。だから先進各国で少子化が進んだ

・人口はそのまま国力につながる。生産年齢人口が減れば、国家は衰退する

・フランスの合計特殊出生率は1.83、スウェーデン1.66。日本は1.30

・日本の低出生率を考える上で避けて通れないのが、未婚化。未婚化が進んだ背景の一つは、男女間の経済格差の縮小

・女性は、自分より年収が150万円程度多い男性との結婚を望む傾向がある→女性から見れば「希望に沿う相手がいない」、男性から見れば「女性に相手にされない」という状況

・日本では、男性の方が高収入でなければ格好がつかないという意識がいまだに根強い。女性が多く稼ぐと、夫婦関係もうまくいかなくなる。その意識を根本から変えないと、未婚化は改善しない

・またフランスやスウェーデンでは、生まれてくる子の5~6割が婚外子(婚姻関係にない男女から生まれた子)。それに比べて日本は2%。この国には、婚外子への差別がある

・フランスやスウェーデンは戸籍制度を撤廃した。父親が誰であろうと、母親が子を産めば親子関係は証明できる。一方、日本の戸籍制度は慣習的に父親中心で、未婚のまま父親の戸籍に入らなければ法的に不利を被り、社会的にも差別される→「非嫡出子」

・移民大国アメリカの合計特殊出生率は1.64。ドイツ、カナダ、オーストラリアも、移民の受け入れで出生率を下支えしている

・自民党の一部や右翼勢力は国粋主義的で、移民の受け入れに反対している。父系社会と日本人の純血を守れれば、少子化で国が滅んでもいいと考えている

・政府は「異次元の少子化対策」を言う前に、父系社会の象徴である戸籍制度を撤廃する「ごくふつう」の少子化対策から始めなくてはならない



2024年8月23日

サマキャン3日目のプッツン

 

あ~、またやってしまった。

サマーキャンプ3日目のプッツン。

今回の現場は男子テント。その朝も、テント内はありとあらゆるモノが散乱して、足の踏み場もない。あと30分で迎えのバスが来るというのに。

早く全員のリュックに荷物を詰めて、テントを畳まなくては…

あぁそれなのに、ギャングエイジの悪ガキどもは、今日もいたってマイペース。「このパジャマ誰の?」「この懐中電灯は?」と聞いても、そっぽ向いて「ぼく知らない」。

そのうち1年生のあおくん(ひとりっ子)が、

「ボクちゃんの帽子がない~」と騒ぎ始めた。

「そのうち出てくるから、まず他のものから整理しようよ。このタオル誰の?この下着は?」「ボクちゃんの帽子どこ~? 帽子がないよ~、帽子帽子!」

他の男子は、ガン無視。こっちは寝不足と疲労でフラフラなのに…

つい、大声が出た。

テントの外で同僚が、「ホトケの宮さんがキレた」と喜んでいる。

(おんどれら何さらしとんねん! 下手に出りゃーつけ上がりやがって、なめとんのかワレ! いてこましたろかー!)

と、河内弁でまくしたてたら、さぞかしスッキリしただろうな~

でも私ごときが怒ったぐらいで、まったく効き目なし。そもそも、自分のことは自分でやろうという発想がない。家では全部ママがやってくれるのだろう。

結局みんなのママに成り代わって、彼らの荷物を全部ひとりでパッキングする羽目になる。

 

いつも他のスタッフに、「宮さんは子どもに優しすぎる」と言われる。

この前は小6の女子に、「宮くんは子どもに優しすぎる」と真顔で諭された。

そんなこと言われても、上手な怒り方がわからない。

子どもへの接し方って、本当に難しい。

 

サマーキャンプでは毎回、ホームシックになる子が出る。

日が落ちた頃、「ママに会いたい~」と言って泣き出す。男の子が多い。

こういう時は、我ながら冷淡だ。

何しろこちとら、生まれも育ちも日本国外。小学生の頃は、粗野で不潔なフ〇ンス人のガキどものサマーキャンプに、1か月単位でぶち込まれた。

「あ? たった2泊でママに会いたいだ? 勝手に泣いてろ」なのだ。

でも女の子がさめざめ泣いていると、話は別。放っておけない。

女性スタッフによると、半分は気を引くためのウソ泣きだというが…

あれが演技だとすると、女の子って生まれながらの名女優!

喜んで、だまされたい。優しく慰めてあげたい。

扱いが不公平?

世の中、そんなもんでしょう。

Yatsugatake Japan, summer 2024




2024年8月17日

ケンロウさんのこと

 

ヒマラヤの高峰、ダウラギリのベースキャンプ。

ケンロウさんのテントは、すぐ目と鼻の先にあった。

標高4800メートルの氷河上に張った、小さなテントで過ごす日々。夜は降るような星空の下で、気温は氷点下だ。人工音が一切ない、太古の静寂が周りを支配する。

「んごごー、ギシギシッ、んごごー、ギシギシッ」

枕の下では氷河が軋みながら、悠久の時間をかけて移動していく。

…いや、どうも違うみたいだぞ。

音の主は、隣のテント。ケンロウさんのイビキと歯ぎしりだった。

(…ったく擬音の多いやっちゃなぁ!)

まだ20代のその頃から、ケンロウさんが撮る山の写真は、構図や光線の使い方が素晴らしかった。版画家のお父さん、染色家のお母さんを持つ血筋ゆえか。センスのかけらもない写真を撮る報道カメラマンの自分とは、雲泥の差だ。

シスパーレ北東壁、ラカポシ南壁、ティリチミール北壁、カールンコー北西壁。

その後ケンロウさんは、「登山界のアカデミー賞」ピオレドール賞を2度も受賞する先鋭的なクライマー、「世界のナカジマ」になった。

(あの歯ぎしりケンロウがねぇ…感慨無量)

同時に、民放「イッテQ!登山部」やNHK「ヒマラヤ・グレートトラバース」などの撮影で、その類いまれな絵心を存分に発揮した。プライベートの山登りと仕事で、最近は、1年の半分以上はヒマラヤにいたんじゃないかと思う。

ケンロウさんを見かけるのは、もっぱらテレビ画面を通してになった。

去年の春、久しぶりに自分もヒマラヤを登れることになり、ケンロウさんに相談した。ロールワリン山群のラムドゥンピークという、あまり知られていない、そして我々の力量にぴったりな山を教えてくれた。

登山を終えたカトマンズで、久しぶりにケンロウさんに会った。相変わらず、テレビの仕事で何か月もネパールに入り浸っているとのこと。

「長女の小学校の入学式があるから、明日の便でちょっとだけ帰国します」

と、嬉しそうだった。

ケンロウさんとパートナーの平出さんの次の目標が、K2西壁だと知った時、この夏は緊張しっぱなしになるぞ、と思った。

岩壁そのものの危険度に加えて、今回は8611mという高さ。

ケンロウさんは、高所順応に時間がかかる体質のようだった。ダウラギリでも辛そうだったし、番組でサポートしたイモトアヤコさんには、「強いけど、誰よりも早く高山病になるのもケンロウさん」と突っ込まれていた。

パキスタンに向けて出発する前、松本の石井スポーツでサイン会を開いたケンロウさんに会った。

「ぼくも、もう40ですよ~」

相変わらずの、柔らかな関西弁。気のせいか、いつもより口数少なだった。


K2西壁では、何が起きてもおかしくない。

頭では、わかっていたつもり。

でも、本当にこんなことになるとは…



2024年8月9日

理想と現実

 

この夏もやって参りました、怒涛のサマーキャンプ月間!

東京の小学生が25人ずつ、6波に渡って自然学校の森に押し寄せ、2泊3日のテント生活を送る。

「リサちゃんは東京のどこに住んでるの?」「…南麻布」

参加費を値上げしたせいか、今年は富裕層の子弟が増えたようだ。

この春、移動教室や課外授業でたくさんの小学校を受け入れた。一部の教師が子どもたちに高圧的な態度で接するのを見て、少なからぬ違和感を覚えた。だからサマーキャンプでは、子どもたちを「小さい大人」として扱った。

「非指示的」に接し、「共感的理解」と「無条件の肯定的配慮」を心がけた。

我ながら、立派なリーダーだと思う。その結果どうなったか、というと…

無条件に、ナメられた。

食事の時はウチの班だけ、おしゃべりやいたずらで大騒ぎ。いつまで経っても食べ終わらない。あんまり急かしたくないしなぁ、と思っているうち、他の班が食器を片づけ始める。

「また宮さんの班がビリですか…」

前職は永田町のプライベートエクイティ・ファンドだという、切れ者キャプテン・なっちゃんの冷たい視線が、背中に刺さる。

「お願いだから早く食べてよ~」と小学生に懇願している自分が…哀れだ。

さらに悪いことに、私の班には「片づけられない女」が集まっていた。キャンプ2日目の女子テントは、ヘアバンドやら鼻をかんだティッシュやら、脱ぎ捨てられたパンツやらかわいい靴下の片方やら、が散乱した。

(あまりの凄惨さに写真を撮ったけど…非公開とします)

「キョウカさん、シャワーの順番が来たよ」と促しても、

「パジャマもタオルもなくした!」と言って、動こうとしない。

「この着替え、シホさんのでしょ」と1年生のシホに手渡したら、

「畳んで!」と、投げ返された。

「…また宮さんの班が、ビリですか」

切れ者キャプテン・なっちゃんの冷たい視線が、またもや背中に刺さる。

キャンプ最終日、シホが「6泊7日のサマーキャンプってないの?」と聞く。

「2泊じゃ足りない?そんなに楽しかったんだ、嬉しいね」「いや、ここにいる間はママに怒られなくて済むから」

子どもたちを新宿行きの特急あずさに乗せ、やっと自然学校に静寂が戻った。

「さっき、宮さんの班にいたあらたんのママから電話があったよ」

校長のまりさん(←親御さんからのクレームを一手に引き受ける気の毒な役柄)が、ボソッと言う。

「また苦情かと思ったら、ウチの子を1分でも長く預かっといて下さい!だって」

あぁやっぱり。あの小さい人たち、実は札付きのワルだったのね。

親子のさまざまな思いが交錯する、信州の森のサマーキャンプ…



2024年8月2日

好奇心夫と、感受性妻

 

「オーストラリアで英語教授法の博士号を取った小学校教諭」

「働きながらアメリカの大学院にオンライン留学して、修士号を取ったキャリアコンサルタント」

3月にセブ島英語留学した時の同級生は、超がつくほどの努力家揃いだった。

そして、この人も。

先日関西から遊びに来てくれた同じセブ仲間の女医ミワコさんは、大学の薬学部を出ていったん会社勤めしたものの、一念発起して医学の道へ。

薬剤師と医師、ダブルで資格を持っている。

今回、夫のエイイチさんにも会えた。彼も先月、同じセブ島の学校で4週間、英語漬けの毎日を送ってきた。

留学初日に「あなたの英語学習の目的は?」と聞かれて、

「いやぁ、妻に強く勧められたもので(仕方なく)…」と答えたそうだ。

3人で森を散歩していたら、エイイチさんが電光石火の早業でセミの抜け殻を3つ見つけ、大事そうにタッパーにしまった。

エゾハルゼミ、という種類だそうだ。

エイイチさんは、昆虫や動物が大好き。今年は、17年に一度しか孵化しない珍しいセミを追って、米イリノイ州の森に分け入ってきた。会社勤めの傍ら、これまでにガラパゴス諸島やマダガスカルにも足を延ばした。

そしてこの冬、彼は南半球をぐるりと回る世界一周の船旅に旅立つ。誰もが名を知る有名企業の社員だが、100日間の休職が認められないと知るや、あっさり退職届を出してきた。

「地球温暖化で風景が変わる前に、この世界を見ておきたい。チャンスは今だけですから」

妻のミワコさんは、「私が働いて稼ぐからいいよ~」と、悠然としている。

今まで「セミ?うるさいなぁ」ぐらいの認識だったが、目をキラキラさせながら話すエイイチさんを見ていると、こちらまでワクワクする。

その翌日は、森の音楽堂へ。3人で葉加瀬太郎氏のコンサートを聴いた。ミワコさんが大ファンで、ファンクラブにも入っている。

今まで「ハカセタロー? あの、もじゃもじゃ頭のおじさんかぁ」ぐらいにしか思ってなかったが…

ステージから3列め、生演奏で聴く「アナザースカイ(ANAの機内曲)」や「情熱大陸」は、想像をはるかに超える素晴らしさ。葉加瀬さんが奏でるバイオリンの澄んだ音色に、涙が出た。

いくつになっても、好奇心と感受性を失っちゃあダメですね。

ミワコ夫妻から、大切なことを学んだ。

Cebu, Philippines 2024


肉食女子

わが母校は、伝統的に女子がキラキラ輝いて、男子が冴えない大学。 現在の山岳部も、 12 人の部員を束ねる主将は ナナコさんだ。 でも山岳部の場合、キャンパスを風を切って歩く「民放局アナ志望女子」たちとは、輝きっぷりが異なる。 今年大学を卒業して八ヶ岳の麓に就職したマソ...