2023年4月15日

登山家たちとの遭遇

大学山岳部のあい先輩(2年生)と、ネパール中部ポカラのホテルで朝ごはんを食べていた時。

突然、大きな撮影機材を抱えた日本人の一団が、ドヤドヤと入ってきた。

アンナプルナ山中、セティコーラ源頭3900mのベースキャンプからヘリコプターで降り立った、「天国じじい」ことヌキタさんの一行だ。

小さい頃はテレビっ子だったあい先輩は、「地球の果てまでイッテQ!」も欠かさず見ていた。テレビを見ない私に、ヌキタさんがなぜ「天国じじい」と呼ばれるに至ったかを熱弁している最中だった。

ヌキタさんを見つけた彼女の眼が、一瞬でハート型になる。

テレビに出ると、女性にもてるんだなぁ。

私にとってのヌキタさんは、天国じじいなどではない。エベレスト登山がまだ大事業だった頃、たった2人でエベレストに挑んだ憧れの登山家だ。

登頂の喜びもつかの間、下山中にパートナーが滑落してしまう。栄光と悲劇の一部始終が書かれた「二人のチョモランマ」は、今でも私のバイブルだ。

ヌキタさんとは、富士山頂で一緒に高山病研究のモルモットになって以来だから、14年ぶりの再会だった。

翌日、ヌキタさんと朝食を食べてからカトマンズに飛んだ。その日の午後、2012年のダウラギリ峰登山で一緒だったケンロウさんに会うことができた。

NHK「グレートヒマラヤトレイル」で、よくテレビに出てくるケンロウさん。童顔とのんびりした関西弁からは想像もできないが、シスパーレ北東壁とラカポシ南壁の初登攀で、ピオレドール賞2度受賞のスーパークライマーだ。

山岳部のナナコちゃんがケンロウさんの大ファンなので、サインをもらった。

テレビに出ると、女性にもてるんだなぁ。

ダウラギリでテントを並べたから知ってるけど、ケンロウさんといえば、寝言やらイビキやら歯ぎしりやら、やたら夜中に擬音の多い人。

でも、ナナコちゃんには言わないでおこう。

さらにこの日は、8000m峰14座を日本人として初めて登ったタケウチさんも同じホテルに泊まっていて、11年ぶりに会うことができた。

これでハットトリック達成⁈ 日本にいたらあり得ない1日だった。

そして翌日は、マカルー東稜登山隊で一緒だったSドクターと焼肉を食べる。マカルーは95年だから、実に28年ぶりの再会だ。南極越冬隊にも参加した「スーパー辺境女医」Sさんはいま、在ネパール日本大使館の医務官をしている。

山岳部2年のマサが、「28年ぶりですか…ぼく、まだ生まれてない」

そういえば、こんなこともあった。ベースキャンプへの旅に途中まで同行してくれたシェルパのパサンさんが突然、「あなたとは会ったことがある」。

彼が見せてくれた「京都大学梅里雪山登山隊」の集合写真に、確かに私と彼が隣同士に写っている。こちらも27年ぶりの再会となった。

セピア色に変色した写真をのぞき込んだマサが、「ぼくまだ生まれてない…」

いちいちウルサイよ!

パサンさんは、エベレストに登頂すること14度名シェルパになっていた。 

Rolwaling Valley, Nepal


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