R大学山岳部のヒマラヤ登山隊に、ひとりOBとして参加した。
私の職場、S病院緩和ケア病棟は、余命宣告を受けた患者さんばかり。
だから、19~22歳の超健康な8人と過ごした一か月は、とても新鮮だった。
ネパールの首都カトマンズに着き、さっそく登山隊の宿を訪ねる。未明に別の飛行機で到着した彼らは、4つの2段ベッド以外は見事に何もない部屋で、ゴロゴロしていた。
キンポン、マサ、ヨコ、DJモト、なっちゃん、マソラさん、あい先輩、ナナコちゃん。
互いにファーストネームやニックネームで呼び合う、Z世代の男子4人、女子4人である。
それにしても、ずいぶんな安宿だ。トイレをのぞくと、便器のすぐ横にシャワーがあり、仕切りも何もない。
1泊500円だという。
エージェントとの打ち合わせや、固定ロープとガスボンベを買い揃えるため、カトマンズに3泊した。町は未舗装の砂利道に車とバイクがひしめき、1日歩くと体じゅう、ほこりと排ガスにまみれる。鼻の中は真っ黒だ。
宿に帰ったらすぐシャワーを浴びないと、気が狂いそうになった。
ところが…
「シャワーを使うと、トイレがビチョビチョになる」
と言って、彼らは誰ひとり、シャワーを浴びようとしない。
マジですか。
「去年の夏山合宿で2週間半、風呂に入らなくても平気だったので」
というのが、彼らの言い分だが…
そんなこと、自信にしていいのだろうか。
私はもう少しまともなホテルを予約して、毎晩シャワーにありついていた。彼らほどは、不潔に強くないので。
その後、カトマンズからベースキャンプまでの1週間、泊まり歩いた山村の簡素な宿に、シャワーはなかった。登山中はもちろん、雪上のテント生活だ。
結局、日本を発ってから連続〇〇日間、彼らは風呂なしで過ごした。
それでも…
私は1日ヒゲを剃り忘れただけでむさ苦しくなるのに、彼らは何日たっても小ぎれいなまま。
慣らし運転を終えた新車のような、輝きを保っていた。
みなぎる生命力は、不潔をも隠す。
Ramdung Peak, Nepal |
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