配属先は、3階南病棟ナースステーション。
朝礼で看護師さんへの挨拶を終えたと思ったら、「さぁ早く着替えて!」
慌てて支給されたばかりの制服を脱ぎ、Tシャツとジャージ、サンダル履きで風呂場に向かう。勤務初日は夕方まで、怒涛の「入浴介助」となった。
寝たきりの患者さんをベッドごと病室から運んで、横になったまま体を洗える「シャワーベッド」に移す作業を繰り返す。
顔に酸素マスクを当てた人、お腹に胃ろうの穴が開いている人、尿道カテーテルを入れている人。そんな患者さんの体位を変えながら、それは鮮やかな手つきで、先輩がパジャマを脱がせていく。
いや、見とれている場合じゃないんだけれども。
中腰になることが多く、半日で腰が痛んだ。
入浴のない日は、「フロア担当」。各病室を回って食事を配り、トイレ介助をし、車いすに乗せてレントゲン室やCT室にお連れする。
病室が多いから、お茶を配るだけで1時間かかる。先輩方は小柄なのに、身長179センチの私が小走りになるほど、廊下を歩くのが早い。
おむつ交換や、「陰洗」(尿道炎防止のための陰部洗浄)といった仕事もある。ナースステーションでは、うら若き女性たちが「今日のAさん(の便)はソフトクリームだった!」と盛り上がっている。
寝たきり患者さんのお尻に、床ずれによる大きな穴(褥瘡)を発見した時は、ちょっとショックだった。
ベッドメイキングでは、床ずれ防止のための「絶対にシワを残さないシーツ交換法」を、厳しく指導された。来年はホテルに転職できるかも!
ランチタイムの休憩室は、女の園。2人いるはずの男性看護師は、どこに雲隠れしたのか、いつも見当たらない。
白衣の天使からは、「早く帰りたい」「このドケチ病院!」といった率直すぎるお言葉と一緒に、
「寝たきりのXさんが廊下を歩いた」
「手づかみでものを食べていたYさんが、箸を使えるようになった」
患者さんの回復を喜ぶ声が聞こえてくる。
今までの経験から照らせば、この仕事はアマゾン並みにきつい。アマゾンで働いた時は、東京ドームより広い倉庫中をカートを引いて駆け回り、食品や日用品など1時間に95アイテム集めてくるのがノルマだった。
アマゾンでは、勤務中は私語厳禁。ノルマをこなせないと叱責された。今回は不慣れな新人にも、「ありがとう」という言葉のシャワーが降ってくる。
今年の職業は、「看護助手」です。
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