2022年3月19日

日本は世界の辺境

 

 同僚に勤務を代わってもらって、北の果てまで行ってきた。

 まず、長野から特急あずさで東京へ。札幌行きのフライトは、雪で2時間遅れ。北海道に降り立ち、まだ冬景色の原野を5時間、列車に揺られて稚内へ。最後は路線バスに乗り換えて4日目の午後、宗谷岬にたどり着いた。

吹きっさらしのバス停に降り立った男5人と女1人は、皆ひとり旅。鉛色の空と寒風が、最果て感を盛り上げる。天気が良ければ、海の向こうにロシアが見えるという。

「まん延防止」のため、稚内の飲食店は軒並み休業中。やっと見つけた居酒屋で、惰性で手をアルコール消毒しようとしたら、すかさず店主が「アルコールは提供していません」。

 思わず消毒液のボトルから手を引っ込めたら、提供しないのは飲むアルコールの方だと判明。北の果ての町は、コロナに対しても守りが固い。

 

宗谷岬ぐらいで、辺境気分に浸ってはいられない。ミャンマーやソマリアに30年通うノンフィクション作家の高野秀行氏は、「いまや日本そのものが世界の辺境」と言う(以下、日経ビジネス電子版のインタビューより)。

・この10年、15年の日本の沈没ぶりはすさまじい。成田空港ほどみすぼらしい国際空港は、探してもなかなかない

・現在のアジアの空港は巨大で豪華だから、バンコクやシンガポール、ドバイから帰国して成田空港に着くと、まるで田舎の各駅停車が止まる駅か、バスの終点みたいな感じがする。「故郷の村」みたいな

・さらにびっくりするのは、「故郷の極東村」が、そのことに気づいていないこと。いまだにタイやインドは遅れていて、日本人はすごく近代的な暮らしをしている、と思い込んで疑わない

・韓国や中国は、日本とは比べものにならないぐらいデジタル化が進んでいる。店で1人だけ現金で代金を払っていると、後ろに列ができるからすごく恥ずかしい。田舎から出てきてすいません、みたいな

・講演で地方の高級ホテルに泊まると、テレビに有料アダルトチャンネルがあって、その案内が部屋に堂々と置かれている。世界標準ではあり得ない

・ラオスでは普通のホテルでも、環境のために毎日シーツは取り換えませんとか、歯ブラシは置きません、ということを案内している。これが世界標準

・日本が経済発展と引き換えに失った微笑みや自然、昔からの生活が、アジアには残っていると言われてきだが、そうしたものは急速に失われつつある

・それはむしろ日本に残っている。日本が大好きな韓国人や中国人は、日本に来ることで自分たちが失ったものを、冗談でなく本気で感じている

・これからの日本は「世界の古都」を目指すべき。ライバルは米中ではなく、スペインやポルトガル。日本の観光資源の豊かさは、スペインの比ではない

Cape Soya, Japan March 2022


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