夫婦そろって日本屈指のクライマーMさんに、女の子が生まれた。
出産を見届けてすぐ、パパは仕事で富士山頂へ、ひと月の出張。ママは早くも、「まずは親子でジョン・ミューア・トレイル!」と張り切っている。
ネットで調べたら「アメリカ西部を縦断する340キロのロング・トレイル」「踏破に1か月、途中に山小屋は一切なし、テント・寝袋・食料すべて自分で背負う事」「ゴール地点は標高4418m」「夜はブラックベアーに注意」だって。
子どもが生まれる前、夫妻は8か月かけてアメリカ大陸を縦断し、岩壁を登りまくっていた。2人にとってはこのトレイル、上高地を散歩するぐらいの感覚なんだろうけど…はるちゃんと名付けた女の子は、いま生後4か月。
作家・演出家の鴻上尚史が回答者を務める「ほがらか人生相談」(AERA dot. の連載)に、30代女性からこんな質問が寄せられた。
夫婦ともフォトグラファー。一家で住んでいたアメリカから、6年ぶりに帰国した。転校した日本の学校で、ビビッドな色の服が好きな小5の娘が「服が派手」と言われ、冷たい目で見られている。親として、どうしたらいいか。
それに対する鴻上さんの回答が、ふるっている。
・神風特攻隊は、近代軍隊が組織命令として死ぬことを要求した。世界的にも、「死ぬ命令」を出した組織は他にない。同調圧力が強く、自尊意識が低い日本だからこそ、特攻という作戦が成立した
・「同調圧力の強さ」と「自尊意識の低さ」は、日本の宿痾
・軍隊がなくなった今、娘さんは同調圧力が一番強い「学校」という組織で苦しんでいる。娘さんがいま直面し、苦しんでいるのは「日本」そのもの
・お父さんが「ひと目なんか気にせず、お前らしく好きな服を着ろ」と言うのは、フォトグラファーという職業が、教師やサラリーマンに比べてはるかに同調圧力が低いから
・アメリカにも同調圧力はあるが、日本ほど強くない。そして皆、自尊意識を持つよう教育される。日本は逆に、自尊意識に対する教育がほとんどない。そして道徳の授業などで、ひたすら同調圧力に敏感になるよう教えられる
・敵は「日本」そのものなのだから、娘さんが正面から切り込んだら、ほぼ間違いなく負ける。対抗手段のひとつは、同調圧力の少ない組織に移動すること。アメリカンスクール、自由な校風の私立、帰国子女が多い学校など
・または、同調圧力に合わせて、地味な服装で登校する。その代わり、放課後や親しい友だちとのお出かけで、自分が着たい服を着て楽しむ。負けたとは思わず、今の学校で生き延びるために選んだ戦略、と心得ること
クライマーという職業(?)は、フォトグラファー以上に同調圧力が低そう。はるちゃんもそのうち、パパやママが世間一般と違いすぎて、面食らうかも知れないなぁ。
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