今や昔の話だが、コロナ禍前まで、大勢の外国人旅行者が日本に来ていた。
彼らは美しい日本の四季、おもてなしの心に溢れた日本人に魅せられた? 私の観察では、海外からの旅行者の一番の目的は、ドンキやヨドバシ、マツキヨ、セブンイレブンだったように思える。
そして私たち日本人にとっても、モノが安いのは、決していいことばかりではない、らしい。
「安いニッポン~価格が示す停滞」 中藤玲 日経プレミア
・「300円の牛丼」や「1000円カット」は、他の先進国ではとても成り立たない。なぜこんなに安いのか?
・長引くデフレで、企業が価格転嫁するメカニズムが破壊された→値上げができない→企業がもうからない→従業員の賃金が上がらない→消費が増えない。だから物価が上がらない
・日本は雇用規制が厳しく、従業員を解雇できない→企業は、従業員の給料を確保するため、製品の価格を下げてでも売上高を確保しようとする
・でも値下げしないと売れないということは、裏を返せばその会社の製品は値下げ前の値段では社会に必要とされていないということ→必要とされていない企業に人を縛り付けておく方が罪では?
・日本は「20年間旋盤を回してきた人に老人ホームで介護の仕事はできない」という考え方。アメリカは「労働者も学習しなおし、それぞれが必要とされる場所で仕事をする方が幸せ」という考え方
→世の中で必要とされる仕事の種類の変化に合わせて、労働者も自己変革しなければならない
・多くの人は「価格が安ければ幸せだ」というが、それは違う
企業からすると、せっかくおいしいチョコレートを作るアイデアが浮かんでも、「価格据え置きなら元が取れない」と商品化をあきらめてしまう→価格を据え置く代わりに量を減らす「ステルス値上げ」のように、どうやって小容量化するかの研究を最重要視するようになる
・安いニッポンは質の良いモノを安く供給しているということで、それは価値に適正な値付けができていないという意味→我々には「質の高いモノやサービスにきちんと対価を払うことは当然」という考え方が必要
・日本企業の給料は安い→NTTの研究開発人材は、35歳までに3割がGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などに引き抜かれる→人材の流出、国際競争力の低下
・物価が上がらないと、中央銀行が金融引き締めに動きにくい→株や証券にお金が集中→労働による所得が増えにくく、投資による所得が増えやすくなる
・企業の利益が出ないので賃金を上げられない→GDPが増えなければ税収も上がらない→将来、社会保障サービスの財源を確保できなくなる