数年前、レトルトカレーの市場規模が、初めてカレールーを上回った。
家庭の食卓を20年にわたって調査している岩村暢子・大正大学客員教授によると、最近は家族全員が揃った食卓でも、それぞれが好きなレトルトカレーを食べるらしい。
食卓の風景から、家族や家庭が持つ重要性がどんどん小さくなっているのがわかるという(岩村教授のインタビュー記事・3月28日付読売新聞より)。
・子どもが中学生になると、もう家族一緒に食事できなくなる。朝・放課後・土日に部活の練習があるから。高校生は塾、大学生はバイトがある
・サービス業などで交代制勤務に就く人が増え、親も食卓を囲めない
・個を尊重する教育を受けて育った人が増えた結果、食べ物の好き嫌いも個性として、無理強いしなくなった。そして食べるものだけでなく、食べる時間も自由でいいと考える
・栄養学や医学の知見も、同じものを同じ時間に食べることを否定する方向にある。健康や運動能力向上のためには、個人に合わせた食が必要
・コロナ禍の外出自粛生活では、家族が長く一緒にいる窮屈さ、不自由さを感じた人が多い。自分の時間が浸食されているという感覚がある
・大事なことは家の中で直接話さず、メールやLINEを使う。波風を立てず、仲良く暮らす
そして食はこれから、個々の特性に合わせた「最適食」の方向へ、科学的にますます進化していくという。
ひとり暮らしを始めた私を気遣ってくれる友だちが、毎日の食事を写真に撮ってLINEで送れ、という。
インスタントやレトルトの写真を送るのは恥ずかしいので、たとえ簡単な料理でも自分で作ろう、というモチベーションになっている。
その友だちは4人家族。先日は、大きな鍋においしそうなカレーが煮えている写真が送られて来た。
最近のレトルトカレーは、タイのマッサマンカレーやプーパッポンカレー、ネパールのダルバート、南インド風などバラエティ豊かで、味も本格的だ。
それでも、所詮はレトルト。家族の誰かが大なべで作って、みんなで食べるカレーの味には、はるかに及ばないと思うのだが…
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