2021年2月6日

夢は夢のままで

ミヒャエル・エンデの名作「モモ」の中で、こんな文章に出会った。

すっかり大金持ちになり、有名にもなったジジが、わが身を振り返る場面。

「モモ、ひとつだけきみに言っておくけどね、人生でいちばん危険なことは、かなえられるはずのない夢が、かなえられてしまうことなんだよ」

(大島かおり訳 岩波少年文庫版より)

 

 野球。フットボール。バスケットボール。アメリカのプロスポーツ選手は、法外な報酬をもらう。NBAトップ選手の年俸は、40億円以上。

 その一方で、元NBA選手の6割が、引退後5年以内に自己破産するという。

 これもアメリカの話だが、宝くじで10万ドル以上当たった人の7割が、その後自己破産を申請しているという。

「宝くじで1億円当たった人の末路」(鈴木信行著 日経BP)によると、宝くじで高額当選した人が陥る不幸には、決まったパターンがある。

・親族トラブルが続発する

・浪費が過ぎて、宝くじに当たる前より貧困になる

・仕事(人生)にやる気がなくなる

そして、宝くじで1億円当たった時の心得も、次の3つ。

・今の生活を変えない

・仕事を辞めてはいけない

・人との付き合い方を変えてはいけない

 当たり前のことのようで、「言うは易し…」なのだろう。

 

 宝くじで1等が当たっても、必ずしも幸せになれるとは限らない。

むしろ、不幸になることの方が多い。

 でも大丈夫。

「年末ジャンボ宝くじ」で1等が当たる確率は、交通事故で死ぬ確率の300分の1以下。

 夢は、夢のままで終わってくれるのだ。

 

新聞社にいた頃、「年末ジャンボ宝くじ」の発売日を取材した。

 東京・有楽町の宝くじ売り場は、その名も「チャンスセンター」。寒風吹き付ける中、他のブースはガラガラなのに、以前1等賞が出たブースだけに、長蛇の列ができていた。

 私の直感では、もう1等が出てしまったブースには、当分同じことは起こらない気がする。

 数字には弱いので、統計学的にどうなのか、わからないですが…


Minami-Izu Japan, January 2021


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