2020年11月13日

引っ越しはインド風に

 友人が、800キロ離れた地方都市に引っ越していったとき。

 会社から転勤の内示が出たのが、赴任2週間前だった。

 理由は「社員の不正を防ぐため」。彼が勤める金融業では普通らしい。

 欧米の大企業や国際機関では、転勤は希望者のみだ。人気のない任地、危険な任地に社員を送るときは、それに見合ったインセンティブが提示される。

紙切れ一枚でいきなり社員を動かすのは、日本の会社だけだ。

 

「紙切れ一枚」で、4転勤した。

引っ越しで持ち物を「断捨離」するチャンスが、8回あったことになる。

たしかに海外赴任の時は、「航空便100キロ、船便10立方メートル、国内倉庫に20立方メートルまで」という会社規定があったから、かなり断捨離した。

でも国内異動には制限がない。引っ越すたび、逆に荷物が増えていった。

段ボール箱が100個を数えたのは、いつの頃だったか。最後の転勤では、トラック2台に荷物を満載して、1000キロ離れた任地に向かった。

晴れて着任したその朝、会社の経理担当に呼び出された。

「キミ、引っ越しにいくら使うつもりなの? なんぼなんでも高すぎるよ!」

 

 フリーランスになった今、自分で自分に辞令が出せる。その代わり、引っ越し代も自腹。以前は「妻が風邪で」と言って、ちゃっかり梱包まで会社経費でやってもらったりしたが・・・

 今回はきちんと断捨離した上で、引っ越し業者に見積もりを頼んだ。

 やってくる営業担当者は、ほとんど男性。電話で「ほんの30分」といっておきながら、契約を勝ち取るまで帰らないゾ、という気概に満ちている。1時間以上も粘る。

 どの社も最初は、「20万円以上かかります」という。「A社は8万円だったよ(←半分ハッタリ)」「B社は粗大ごみの処分もやってくれるよ」といって各社を競わせると、見る間に言い値が下がり、半額以下になっていく。

 このあたり、けっこうインド的。定価などあってないようなものだから、振れ幅が大きい。きちんと準備して臨まないと、ボラれそう。

 この春に東京から長野に引っ越した家族の情報を、前もって仕入れてある。あらかじめ相場がわかれば、有利に交渉できる。

でもギリギリまでは値切らず、最後は人となりで決めた。

 

その担当者は、電卓を叩きながら、途中で何度も本部に電話していた。

 ・・・そこを何とか・・・もっと値引きを・・・お願いします・・・

 上司とのやりとりを聞かせて、「私はお客様の味方です」とアピールする。

 彼の工夫と熱意に負けました。 



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