入院の際に妻が持参した本は、穂村弘の「世界音痴」だった。
穂村弘は歌人だが、エッセイの名手でもある。めっぽう面白い。
でもそのうち、
「人生最後の読書が穂村サンじゃねぇ・・・」
と、言い始めた。
・・・わかる気がする。
そして差し入れたのが、村上春樹「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」。彼女は大のハルキ・ファンなので、たぶん再々読か、再々々読だったと思う。
病身には文庫本さえ重かったらしく、バラバラに裁断し、軽くして読んでいた。スマホにはあまり触らず、備え付けのテレビには目もくれなかった。
彼女のような本好きが喜ぶ記事を見つけた。米国の神経科学者、メアリアン・ウルフのインタビュー。「紙の本は深く読む脳を育む」という。
(以下、7月12日付読売新聞より要約です)
・トランプ米大統領は読書が嫌い。歴代大統領の中でも、異例の存在だ
・トランプ氏は読むことに習熟していないので、他者に共感できない。だから自分自身が知っていることを過信し、妄信してしまう。トランプ氏が唱える「米国第一主義」は、幼稚な自己中心主義だ
・ただ読書嫌いは、直ちに無分別を意味しない。哲人ソクラテスは「人生の意義は言葉を吟味し、問いを発し、自ら思考すること。読むことは書き手に頼ることにあり、怠惰に堕する」といって、読書を批判した
・ソクラテスの批判は、現代のデジタル文書に通じる。スマホなど現代のデジタル媒体は、「言葉を吟味し、問いを発し、自ら思考する」ために適した媒体ではない
・真の理解は、時に立ち止まり、後戻りして、作者が姿を現すのを待つことで得られる。デジタル媒体は、結末に向けて読みを急かしてしまう
・電子書籍にも同様の落とし穴がある。つい読み流し、吟味が疎かになり「深い読み」ができない
・加えて、デジタル媒体は文章が短くなる。読み飛ばす読み手は、書き飛ばす書き手になるもの。ツイッターは象徴的
・トランプ氏は、自身の思いつきを単純な短文でつぶやくことしきり。それでは事態の複雑さを見落とし、多角的な見方もできない
・速読向きのデジタル媒体に染まると、ヒトは考えに時間を割かなくなり、短絡的になり得る。米国には、デジタル世代は他者への共感が薄くなっているという知見もある
・子どもの時になるべく多く紙の本に親しみ、デジタル媒体に接する時は、意識的に注意深く読む習慣をつけることが大切
天国はwifi完備だったりして・・・