訪問看護師のイトウさんには、小学校に通うふたりの子がいる。
コロナ禍で2か月以上も休校になった間、兄妹は家でテレビ&ゲーム三昧だった。エネルギッシュで外向的なイトウさんは、
「私が誘わないと、外に出ようともしないんですよね~」
「友だちと会わなくても、ぜんぜん平気みたい」
と、不思議がっていた。
今月から学校が再開されて、週3回、半日ずつの授業が始まった。
2人とも、学校に行くのがイヤそうだという。
新聞は「先生や友だちと再会して歓声を上げる子どもたち」などと報道するが、そんな子ばかりじゃないのだ。
去年、ファミリーサポートで父子家庭の子を送迎していた時、お兄ちゃんのマモ君が、しょっちゅう発熱して学校を休んだ。
パジャマ姿でうれしそうに手を振るマモ君と、うらめしげな弟ユート君。
「学校楽しくないの?友だちにも会えるし」クルマの中でユート君に聞くと、
「行きたくて学校に行く子どもなんかいないよ!」
小学1年生が、断言した。
作家・村上春樹の両親は、ふたりとも国語の先生。
でも「職業としての小説家」を読むと、彼自身は学校が苦手だったらしい。
「大学をなんとかようやく卒業したときは、『ああ、これでもう学校には行かなくていいんだ』と思ってほっとした」
「でもまあ、学校が好きでしょうがなかった、学校に行けなくなってとても淋しいというような人は、あまり小説家にはならないのかもしれません」
彼は学校の勉強の代わりに、たくさんの本を読んだ。
「僕にとっては読書という行為が、そのままひとつの大きな学校だったのです。それは僕のために建てられ、運営されているカスタムメイドの学校であり、僕はそこで多くの大切なことを身をもって学んでいきました」
「僕が学校に望むのは『想像力を持っている子供たちの想像力を圧殺してくれるな』という、ただそれだけです。それで十分です。ひとつひとつの個性に生き残れる場所を与えてもらいたい」
そして村上春樹は、現実の学校制度に馴染めない子どもには、個としての生き方を理解し、後押しする家庭の存在が必要だという。
とことんインドアなイトウ家の子どもたちだが、仕事から戻ったお母さんがサイクリングに誘うと、素直についてくる。
適度な距離で見守ってくれる母に恵まれて、2人はかなりラッキーかも。
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