わが愛しのタイ航空が、経営破綻してしまった。
新型コロナの威力、恐るべし。
初めてタイ航空に乗ったのは、バンコク経由でインドを旅した19歳の時。
そして、バンコクを拠点にアジアのニュースを追っていた頃は、ジャカルタ、マニラ、ハノイ、イスラマバード、カトマンズ、アンマン、ドバイ、シドニー、北京へと、3年間で120回も乗った。
タイ航空をひと言で表現すれば、「さりげなく、さりげあるもの」。
たとえばJALやANAに乗ると、会社の経費で飛行機を使い、マイレージの上級会員になった日本人サラリーマンがふんぞり返っている。彼らのぞんざいさと、客室乗務員が作る必死の笑顔。あまり見たくない光景だ。
タイ航空の機内は、もっとコスモポリタン的。国際線はもちろん、国内線でもタイ人乗客は少ない。欧米やアジアなど、いろいろな国籍の男女が、仕事、観光、移住、いろいろな目的で乗り合わせる。
そんな機内で、自然な笑顔を浮かべたキャビンクルーが、柔らかな物腰で、誰にでも公平なサービスを提供する。
一般に、日本人に比べると時間にルーズなタイ人だが、タイ航空は意外にも?時間に正確だった。仕事で100回以上乗って、飛行機が遅れて決定的場面を撮り逃したことは皆無だった。
一度だけ、取材を終えて乗った帰りの便が、滑走路手前で離陸を中止して、引き返した。「機体に不具合が見つかった」と、機長からアナウンス。
すると、われわれ乗客より先に、客室乗務員が不機嫌になった。バンコクでデートの約束でもあるのか、とても声を掛けられない雰囲気。
不測の事態が起きた時のプロ意識は、少し足りないような・・・
またタイ社会では、おかま、いやゲイやトランスジェンダーの人をよく見かけるが、タイ航空の客室乗務員にも多かった。彼ら(彼女ら?)はまさに「気は優しくて力持ち」。これが天職とばかり、楽しそうに働いていた。
たまに、シンガポール航空にも乗った。この会社も、機内サービスには定評がある。でも満席のエコノミーでは、客室乗務員が機内食を手に走り回る。
「廊下は走らない!」小学校で教わらないのかなあ。
いくら忙しくても、あくまでマイペース。決して優雅さを失わないタイ航空が、やっぱり好きだ。
自由に空を飛んで、世界中どこにでも行けることを、当たり前だと思っていた。新型コロナが、すべてを変えてしまった。
もし空の旅ができる世に戻ったら、倒産を機に「汚職と縁故主義が蔓延する国営企業」の体質を払しょくし、生まれ変わったタイ航空に乗ってみたい。
外出自粛中のニンゲンを眺める |
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