2020年5月16日

台風の時は家にいろ。川なんか見に行ったらあかんで


新型コロナウイルスの感染拡大を、人類5000年史の中に位置づけると、どのような意味を持つのか。

世界1200都市を訪れ、読んだ本は1万冊。知の巨人、出口治明・立命館アジア太平洋大学(APU)学長のインタビュー抜粋です(日経ビジネスより)。

・一部の人が「グローバリゼーションがコロナを生んだのだから、グローバリゼーションを見直さないといけない」と言っている。そんなバカなことはない

・例えば日本が入国制限をしているのは、各国が出入国管理をしっかりやっているから。もし世界が何もしなかったら、日本は入国制限などできない

・都市封鎖や感染状況のデータも、世界中でシェアされている。我々はグローバリゼーションのおかげで、コロナの被害をこの程度に留められている

・自動車がなければ物流が止まり、ステイホームできない。自動車は1年間で100万人以上の人を殺しているが、自動車を廃止しようという人はいない

・「パンデミックが起こったからグローバリゼーションをやめよう」というのは、「自動車は人を殺すから自動車をなくしてしまえ」という議論と同じ

・コロナ・ウイルスの感染拡大は、超大型台風のような自然現象。だから、治療薬やワクチンが開発されるまでは「ステイホーム」。「台風の時には家にいろ。川なんか見に行ったらあかんで」というのと同じこと

・今回、特徴的なのは、ウイルス対策に取り組む指導者たちの発言や行動を、全世界の人たちがSNSでほぼ同時に見ていること

・いま評価されている指導者は、メルケル独首相と小池百合子・東京都知事。ドイツと東京の共通項は、財政黒字。キケロが「戦争はお金やで」と言ったが、ウイルスとの戦争でも、財政が潤沢なら思い切った手が打てる

・フランス、スペイン、イタリア、米国などで、医療従事者たちにベランダから拍手を送ろうという運動が起きた。日本では、医療従事者の子どもの保育を断られたり、東京ナンバーの車に暴言を吐く人の様子が映像で流されたり

・指導者だけでなく、私たちの社会の成熟度も、全世界で試されている

・歴史を振り返ると、パンデミックは必ずグローバリゼーションを加速させてきた。ペストがルネサンスと宗教改革を生み、スペイン風邪が第一次世界大戦を終わらせて国際連盟を生んだ

・いま、マスクのほとんどは中国で生産されている。サプライチェーンの再構築には時間と金がかかる。世界の協調なくして、ウイルスには勝てない

・現在のような複雑な社会は、一人の賢い人間がコントロールできるものではない。だから社会主義は失敗した。中国が現体制を維持できるのは、秦の始皇帝から2000年続く中央集権の伝統があるから

・「賢い人がいなければ、市場の原理に任せてみんなでワイワイ、ガヤガヤやるしかない。だから、市場経済が勝ったわけです。ですから僕は、市民がしっかりしていれば、監視社会には向かわないと思います」


Nagano Japan, Spring 2020

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