ウチの玄関、まだ日陰に雪が残っている。
朝の気温は氷点下。ひと月前は、マイナス10度まで冷えた。東京では、とっくにサクラが散ったのに。
ダウンジャケットを着て、自宅からつづら折れの山道を、クルマで30分。町に下りると、小中高生が半袖で歩いている。
何だかんだ言って、日本は広いと思う。水平方向にも、垂直方向にも。
ひときわ冷え込んだ、ある夜。部屋の石油ヒーターが、ひと晩中唸りを上げていた。朝になって、突然、静かになった。
屋外の200リットル入り灯油タンクを見に行くと、カラに近い。室温が、どんどん下がっていく。
8キロ先のガソリンスタンドまで、灯油を買いに走る。新鮮な油をたっぷりヒーターに食べさせて、スイッチON。
・・・つかない。
中古の家を「居抜き」で買ったので、ヒーターも20数年前の年代もの。いつ壊れても、おかしくなさそう。
急きょ、電器店やホームセンターを回った。店の人はみな「暖房器具? さあ・・・あるとしたら“季節もの処分コーナー”かな」と、つれない。案の定、軒並み売り切れている。
ネット通販は、届くまで数日かかる。しかも、わが家は標高1600メートル。高地仕様の特別なヒーターしか使えない。
今夜をどうやって過ごそう。家族はとっても寒がりだ。困った。
ふと思いつき、湖畔の宿のオーナー、タマさんに電話した。清掃係やフロント係のバイトで、毎夏お世話になっている。
「ストーブですか? 何台でも貸しますよ! いま新型コロナのせいで、空室だらけなんで」
まさに、捨てる神あれば拾う神あり。すぐ町を出て、山上の湖を目指す。タマさんが、大小の暖房器具を並べて待っていてくれた。
大きな達磨ストーブを借りて自宅に運び入れ、点火。頼もしい炎が上がり、部屋がガンガン暖まっていく。
翌日、ゆとりを取り戻して、業者にヒーターの修理を依頼した。最初の人は、しばらくいじって「私の手に負えません」。メーカーにも、部品の在庫がないという。ヒーターを新品に交換すれば、工事費込みで20万円。イタイ。
2人目の業者さんは、「ちょっと待って」。ヒーターの裏に、おもむろに手を入れた。外部タンクにつながるパイプの、捻じれを直している。
そしてスイッチON。
あっけなく再始動した。
思うに、このワイルドな地で暮らすには、自分にはDIYの知識がなさすぎる。
家の近くで |
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