「アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した」J.ブラッドワース著
英国のジャーナリストが、アマゾンの倉庫や訪問介護ヘルパー、ウーバーの運転手など、最低賃金労働の現場に“潜入”したルポルタージュ。
著者が英国にあるアマゾンの倉庫で感じたことは、私が近所のアマゾンで働いて得た感慨と、驚くほどよく似ていた。
「少しでも太っていれば、この仕事は拷問に変わる。一定の年齢を超えた時にも、同じことが当てはまった」「全体として、従業員に対する思いやりはどこにも見当たらなかった」
1時間当たり作業量のノルマを課せられ、常に“生産性”を監視されながら、広い倉庫内を駆けずり回る。米やビールを積んで、重さ40キロにもなるカートを引きながらのピッキングは、若い男性以外には、辛い仕事だ。
「アマゾンで働いていた間、ずっと私は疑いという名の暗い雲の下にいる気分だった」
出口に設置されたX線探知機と、ポケットのハンカチまで広げさせられる手荷物検査。そして、「ケータイの倉庫内持ち込みは即解雇」の張り紙。いくらコソ泥や情報漏洩を防ぐためとはいえ、毎度気分が悪い。
「ゆっくりやろう。他の人の仕事を奪うようなことをしてはいけない」
時間当たりの目標ピック数を下回った時、監督者に注意された。でも考えてみたら、この“目標”は、過去の平均を基に作られているはず。言われた通りにがんばれば、平均がどんどん上がってしまう。
私がマイペースを貫くことで、救われる人もいる。だから、がんばらない。
「労働者階級の人々は、現実からの感情的な逃げ道として脂っこいポテトチップスを買う」「単純労働による身体的、感情的な消耗を、何かで補う必要に迫られる」
仕事帰りに、私も無性にポテトチップが食べたくなった。店で買って、家でむさぼり食った。うまい!これは・・・麻薬だ。
「結局のところ、私は観光客でしかなかった。大きな問題が起きれば、私はいつでも銀行でお金を下ろすことができたし、より快適な生活にそそくさと戻ることができた」
アマゾンの倉庫での仕事は、「物質文明を知るための社会勉強」「運動不足の解消」「小遣い稼ぎのアルバイト」など、短時間&短期間がいい。間違っても、この仕事で家賃を払い、家族を養っていこうと思わない方がいい。
もし地元にこの仕事しかなかったら?と思うと、ゾッとする。
この年末年始は、アマゾンの倉庫で働きながら、本書やJ.D.ヴァンスの「ヒルビリー・エレジー」を読み、ケン・ローチ監督の映画を観た。
英国の地方で暮らす人々がBREXITを選び、米国の地方で暮らす人々がトランプ大統領を選んだ、その根底にある社会への閉塞感。今は、わかる気がする。
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