2019年9月13日

フリーランスは地獄耳


 新聞社で働いていた時の友人たちと、東京で飲む。

テレビがなく、ろくにネットも通じない森の家を出て、いきなり現役ジャーナリストに囲まれる。自分が同じ会社にいたのが信じられず、まるで100万光年前の出来事のよう。

彼らは彼らで、「辞めて5年でここまでボケるかなあ」と、呆れたと思う。

東京五輪を来年に控えて、紙面では特集が組まれ、取材合戦が始まっている。3040代の元同僚、特に五輪担当の記者からは、熱気や高揚感を感じた。

それに比べて50代の友人は、5年10年とミドルマネージャーを続けていて、大変そう。社員の年齢構成がいびつなため、昇進が遅れに遅れるのだ。

ある年齢で突然、取材現場から外れ、「デスク」という名の調整役に回される。それからは朝から晩まで、社内に缶詰めの日々。権限はないのに、責任は無限大。自分の場合5年どころか、2年も持たなかった。

(バブル期入社の私が抜けたのは、会社にとっても同僚にとっても好都合。我ながらクリーンヒットだった)

50代サラリーマンの「辛さ」については、コラムニストの小田嶋隆とコピーライターの岡康道が、対談本「人生の諸問題」で明快に解説してくれている。


「サラリーマンにとって一番つらいのは50代。会社の中で訳の分からないゲーム、ルールが分からない最終ゲームが始まって、なんだかよく分からないぞ、とまごまごしているうちに勝ち負けが決まっていって・・・」

「一番仲が良かったあいつが執行役員になって、俺が子会社に出向になった、ということが起きる」「その時期に一番分かり合える人間と、一番遠ざからなきゃいけなかったりする」

「で、自分の中でも、それから社内でも、なぜなぜなぜ、っていう話が渦巻く。それが人事異動という形で1年とか半年にいっぺん起きる」

「日本経済が上向きのころだったら、そのあたりは処理できた」「今の50代の人たちがキツイというのも、この先日本は成長が見込めない時代になるというのがでかい」

「それに比べるとフリーランスの人生にそういう(人事異動の)波乱はない」

「会社を途中で辞めてフリーランスになった人間は、そういうのがないから、五十路についてかくも深く気楽に話し合える」



「出世レースからの墜落」
 以前の飲み会で、上司と部下の間柄だったり、ポストを争う相手だったりした人と、そんなものを全部取り払って話せるのは、とんでもなく楽しかった。

 そして皆が、社内の“噂の真相”をあけすけに語ってくれるのも、人畜無害なフリーランスになったがゆえの役得だ。




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