2018年7月21日

林住期


 古代インド人は、人生を4つに分けて考えたという。



 学生期・・・学び、備える時期

 家住期・・・家庭を築き、仕事に励む時期

 林住期・・・森に庵を構えて、瞑想する時期

 遊行期・・・家を出て、思うままに遊行する時期



 それぞれに25年を充て、最後の遊行期で死を待ったらしい。

 もし、この「学生期」「家住期」「林住期」「遊行期」を、1年で回したらどうなるだろう。

 充実した日々を送れそう。

そう思って、実は3年前から実験を始めた。

 春と秋は関東で学生期&家住期。冬は東南アジアで遊行期。




 そして、夏は林住期。

 関東のはずれに借りたマンションから、森のボロ山荘に引っ越す。

 期間限定の、にわか信州人だ。



 猛暑の関東から100数十キロ。深山の朝は冷える。

だるまストーブに火を入れる。

 野生のシカが庭を横切る。後には盛大なシカのフン。

 樹間に陽が差しこむ頃に、クルマで出勤。

通勤路は、1800メートルの峠を越える雲上のドライブだ。

片道16キロの間に、信号はひとつだけ。目の前をキツネが横切る。

着いた先は、避暑客でにぎわう湖畔の宿。

客室係として、淡い青空を見上げながら布団を干す。

去年の夏、宿のオーナー夫妻に女の子が誕生した。

その子Yuraちゃんが、洗濯物の上に乗せられて廊下を行進する。

午後に帰宅し、バルコニーでボーッとする。

やがて日が暮れ、褐色の物体が、畳の上をザザザッと走って風呂場に消えた。

ヤマネ? ただのネズミ? 正体はわからない。

 3度の食事は、地元の農家から買う高原野菜が中心。

夜、外でホタルが青白い光を明滅させている。

この3年で初めて、蚊に刺された。

この高度まで蚊が上がってきたのは、地球温暖化のせい?



テレビはなく、インターネットもつながりにくい。

ここにいると、正気に戻れる気がする。やっぱり現代は、余計な情報が多すぎる。

でもまだ、古代インド人みたいに瞑想はできていない。


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