2018年6月9日

ニコタマこわい



 東京近郊で小学生の子を持つ親には、子どもの安全を確保すべく、怪しげな人物についての情報が逐一メールで送られてくるという。

 社会学者で一児の母の水無田気流が「居場所のない男、時間がない女」に書いている。

 怪しい人物として報じられるのは、たいてい昼間に住宅地をうろついている男性。「事案」にはこんな内容が多く含まれている。

「児童が道を聞かれた」事案。

「この道を行くと駅ですか?」と尋ねられた事案。

「落とし物だよ!」と声をかけられた事案。

 さらに「道を男性が歩いている」という事案まで。

・・・読んでいて、まるで私のことかと思った。

基本的に職場が居場所とされる年齢の男性が「昼間から」「ぶらぶらしている」という事実は「犯罪」を予期させるとされ、「事案」として警察や自治体に通報されるのだという。

 都心に通うサラリーマンだった私は仕事が不規則で、午後に出勤して夜中に帰宅したり、夕方に出て朝帰りしたりした。だから平日、白昼の住宅地がどんなに疎外感を覚える場所か、当時からよくわかっていた。

3年前に晴れて自由業者になった時、住んでいた二子玉川から一目散に逃げ出した。

こんな所でウロウロしていたら、毎日「事案」化されてしまう。

日本の全就業者に対する自営業者の比率は、2014年に11%まで下がった。全国的にサラリーマン化が進んで、「男性は平日の昼間に居住地域にいない」傾向がどんどん強まっている。

いま暮らす街は、新幹線通勤の大企業社員を除けば、ほぼ東京通勤圏外。地元の人相手に小商いする自営業者も普通にいる。平日の住宅街を歩いても、ピリピリしていない。

ファミリーサポートでよその子をプールや体操教室や空手道場に迎えに行くと、午後4時に本物のお父さんが迎えにきていたりする。

同じくファミサポ依頼で保育園や学童クラブに行けば、6歳のおさげの女の子を「ハイッ」と手渡してくれる。私が品行方正に見えるから・・・ではなく、お母さんが周到に根回ししてくれているからだ。でもうれしい。

 引っ越してよかった、と心底思う夏の夕暮れ。

Saigon Zoo, January 2018

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