生活保護の子たちの学習会を手伝いに行ったら中2のリョータ君が連立方程式を教えてくれと言い、40年前に習ったはずなのに完全に忘れてしまっており、悶絶していたらダイスケ君が見かねて助けてくれた。
ダイスケ君はこの春、大学を出て社会人になった。世間の荒波に揉まれているかと思いきや、やけに血色がいい。
いわく、「仕事って楽なもんですね」
彼は大手コンビニ・チェーンに入社し、研修を終えて、私鉄沿線の店に配属された。学生時代のバイト先もコンビニだったので、すでに現場はお手のもの。「あいさつの声が小さい!」と、バイト女子を叱って泣かせている。
新入社員のくせに、もう部下がいるのだ。
しかも残業はない。残業をしないよう、人事部が見張っている。
「そもそもダイスケ君、キミなんでここにいるの?」と聞くと、今日は有給休暇を取ってきたそうで、会社から有休を取るよう言われているのだそうだ。
もう半年もすれば店長になれる、という。
聞けば聞くほど妬ましい。
私の新人時代は、奴隷そのものだった。「おれが帰っていいと言うまで帰るな」と上司に言われて毎晩残業。休日はいとも簡単に召し上げられた。たまたまそういう会社に当たったのか、そういう業界だったのか、時代のせいなのか・・・
「24時間 戦えますか? ジャパニーズ・ビジネスマン!」
勇ましいCMソングを、悲しく聴いた。
昭和な頃に新人だった私も、最近新しい仕事を始めた。
デイサービスの送迎ドライバーを週2回。
前任者が心臓発作で急逝し、ヒマそうな私に白羽の矢が立った。若い人はやりたがらず、シルバー人材センターからも応募がないと社長のCさんは嘆く。
仕事を教えてくれる先輩ドライバーは70代。デイサービスの利用者は80~90代。高齢者が高齢者を支えている。
気安く引き受けたものの、やってみると難しい。お年寄りの家はたいてい、狭い道の奥にある。Uターンできない袋小路にも3軒。図体の大きな車で、延々とバックしなければならない。
人生も車の運転も、前進は大好きだがバックは苦手だ。
出勤初日にいきなりバンパーをぶつけた。会社の車を傷だらけにして、秋を待たずにクビになりそう。ここが広々としたアメリカの郊外ならいいのに。
この世にたやすい仕事はない。社会人生活は楽勝だというダイスケ君にも、そのうち試練が訪れるだろうか。いや絶対訪れて欲しい。
24時間 働きますか? ジャパニーズ・・・コンビニマン!
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