免税店でベンツが買えるUAE・ドバイ国際空港。
その豪奢なメーンターミナルとは似ても似つかない、まるで倉庫のような建物が第2ターミナルだ。イラク行き、アフガニスタン行きが発着する。
アフガン出張では毎回、タクシーのパキスタン人運転手に「第2ターミナル?知らないよ」と言われた。
夜明け前の第2ビル。バグダッドやバスラ、カンダハル行き搭乗ゲートには、分厚い胸板を迷彩服に包んだ男たちが行列を作っていた。薄暗い中、誰もが押し黙っている。
私が乗るカブール行きの列には、スカーフから金髪がのぞく小柄な女性の姿があった。国際機関やNGOで働いているのだろうか。少し心が和んだ。
「帰還兵はなぜ自殺するのか」 デイヴィッド・フィンケル著
ピュリッツァー賞受賞記者が、戦地から戻った兵士のその後を追ったノンフィクションである。
イラクやアフガニスタンの戦場に派遣された200万人のアメリカ人。そのうち50万人が、PTSDやTBI(外傷性脳損傷)などの精神障害を負った。
360度あらゆる場所が戦場で、前線もなければ軍服姿の敵もいない。予想できるパターンもなければ、安心できる場所もない。突然、どこかで仕掛け爆弾が爆発し、仲間が装甲車ごと炎に包まれる。
そんな経験をした兵士たちは帰国後、苛立ちや重度の不眠、怒り、絶望、ひどい無気力に苦しむようになる。睡眠薬と、起きている間眠らないようにする薬、鎮痛剤、抗うつ剤など1日43錠の薬を処方され、浴びるように酒を飲む。
そして、「死にたい」と言うようになる。
夫の帰還を待ちわびていた妻も、悪夢を見た夫から夜中に首を絞められたりする。そのうち、自らも悪夢に苦しむようになる。
そんな両親を見た子どもも、不安からおねしょをするようになる。
兵士の多くは若い志願兵だ。彼らは大変な愛国者だったりする一方で、入隊前に失業していたり、2人の子持ちだったり、医療保険失効者だったりする。
そして彼らの祖父や父親もまた、第2次大戦やベトナム戦争帰りのアルコール中毒者だったりする。
絶望的な世代間連鎖が起きている。
イラク戦争は、イラクが大量破壊兵器を隠しているという理由で始められた。だが結局、その事実はなかった。
彼らの子が大きくなる頃、アメリカはまた別の戦争を始めているのだろうか。
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