生活保護の子が通う無料塾で。
「あのね、ソロバン教室に通うの。近所のA教室と、遠いけど月謝が安いB教室、どっちがいい?」カンナちゃん(小5、仮名)が唐突に聞く。
「そんなのわからないよ。見学してカンナちゃんが気に入った方にしたら?」
「うんじゃあそうする」
彼女はひと頃、学校で「離婚っ子」と言われていじめられた。少しでも異質なものを排除の対象にするのは、大人社会のマネか。
でも本当は気が強い。ボランティアのおじさん(私)を平気で蹴飛ばす。
数週間後。
「で、ソロバン教室どっちにしたの?」
「・・・ねえねえが予備校に行くことになったから、カンナは我慢する」
「なんとかする」子どもの貧困・・・湯浅誠 角川新書
「お金がない。つながりがない。自信がない。これを貧困と言う」。そして日本の子どもの貧困率は、7人に1人。
著者は、子どもの貧困は理解されにくいという。特に高齢男性。「昔の方が大変だった」「大学に進学できない?自分は中卒で働いた」という。そして、この人たちが地方議員や自治会長など、社会で力を持っているから厄介だ。
確かに途上国のストリートチルドレンや、栄養失調で腹が膨れたアフリカの子のような「わかりやすい」貧困ではない。でも、親の経済力によって子どもの希望が奪われている現実は、見るに忍びない。
本書によると、子どもの貧困対策の、民間の2本柱が「子ども食堂」と「無料塾」だ。親が不在がちなひとり親家庭の子らに、居場所を提供している。
「子どもにはかまってもらう時間が必要だ。話しかけたり、耳を傾けたり」「一緒に過ごす時間の中で、子どもたちの中に何かが溜まっていく」「そしてある時、溢れる」「その時、子どもたちは何かやってみたい、と言い出してみたり、急に勉強し始めたりする」
自立には、依存が必要なのだ。
著者は問う。子どもたちは「かまってもらう時間」を必要としている。「では、大人たちにその時間はあるのか?」
著者の湯浅氏とは、取材で2度会った。2度めは自宅に伺った。もし反貧困活動家が豪邸に住んでたら・・・道中、不安だった。
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