湖畔のポカラ食堂に団体予約が入り、ふたたび手伝いに行った。
アカシアが黄金に色づき、店には暖房が入っている。
「いらっしゃいませ!」現れたのは、今夜も台湾の学生さんたちだ。
ひとりが「〇▲×ミルク、クダサイ」と言った。ミルク?酒やジュースならあるが、牛乳は。断る前に、念のためメニューを確認した。
カクテルのページに「カルーアミルク」とある。
店主のタイキさんに注文を伝える。彼の手元を見ていると、コーヒーリキュールを冷たい牛乳で割っている。この世にこんな飲みものがあったとは。
男子が頼んだカルーアミルクを、女子たちが味見。そして、「カルーアミルク下さい」「カルーアミルク」「私も」
あっという間に10杯売れた。思わぬ展開にタイキさんも笑顔。前回は女子がジュースしか飲まず、赤字だったのだ。
うっかり「牛乳はない」と断らなくてよかった。
宴もたけなわ、みんな楽しそう。私が学生の頃は「イッキ飲み」最盛期で、先輩に酒を強要された。いまだにアルコールが苦手で、旅行でイスラム教国に行くとホッとする。物理的に酒がない世界は気持ちいい。
社会人になり、パキスタンに出張した。治安が悪いため、現地支局長のSさんは、妻と小さな娘を残して単身赴任していた。鉄格子で囲まれた支局に籠城しながら原稿を書く姿には、鬼気迫るものがあった。
そして彼は、アフガニスタンにも毎月のように入っていた。かの地は、さらに治安が悪い。見上げた記者魂だと思った。
ある時、アフガン取材に同行した。出発前から、妙に彼の表情が明るい。「いや、アフガンはパキスタンより酒が手に入りやすいんです」。
女性がブルカで顔を隠すアフガン。イスラムの戒律がとても厳しい国だ。そんな国でも酒の在り方を探り当ててしまう、鋭い酒飲みの嗅覚。
アフガンに着いたSさん喜々として、外国人が飲んだくれているレストランに出かけていく。私もついて行ったが、いかにもイスラム過激派の標的になりそうな場所だ。
と、思っていたら案の定。後日、そのレストランに自爆テロ犯が突っ込み、多くの死傷者が出た。
そこまで危険を冒して・・・
見上げた酒飲み魂だ。
大学を出てかなりたち、子どものような世代の学生たちと酒席を共にした。酒を勧められた彼ら彼女らは、「私は未成年ですから」。堂々とジュースを注文していた。
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