日経ビジネスオンラインで、働き方に関するライフネット生命創業者・出口治明氏のインタビューを読んだ。とても共感できる内容で、会社で働いていた頃を思い出した。
「上に立つ人間は、元気で明るく楽しい顔をしていなければなりません」「上司が元気で明るく楽しそうにしていれば、職場は楽しくなるんですよ。楽しくなれば、みんながんばるんです」「暗い顔や怖い顔をしている上司は、どんどんクビにして行けばいいんです」
私が25年のサラリーマン生活で仕えた10人の部長は、みな怖い顔をしていた。局長や社長や会長がとびきり怖い顔をした人たちなので、「上司は怖くあるべき」という刷り込みがあったのかも知れない。
プレッシャーがきつい立場に同情はする。だが、「部下の能力を発揮させて成果を上げる」という彼ら本来の役割からいえば、逆効果だった。ミスを恐れて縮こまるムードが、職場に蔓延した。
「プレーヤーとマネージャーは違います。例えば高校野球で言いますと、昔はエース4番がキャプテンも兼ねていたんです。でも今は、補欠でもキャプテンをやっている選手がいっぱいいます」「みんなをまとめるのがうまい人がキャプテンをやる方がいい。マネージャーは150キロの球を投げなくても、ホームランを打たなくてもいいんです」「そもそも、プレーヤーからマネージャーにするという考え方自体が間違っています。役職は偉さでなく、機能と考えなければ」
前の会社では、部長席にはふかふかのクッションと高い背もたれ、立派な肘掛けがついていた。そういう会社側の仕掛けが、部長たちを「役職は機能ではなく偉さである」と勘違いさせていたかも知れない。
「マネージャーとして大切なのは、部下の話をよく聞かなければならないということです」「そういう話を講演会でした時、手を挙げた人が「私もそう思ってこの10年来、ほぼ毎日飲みニケーションをやっています」と言ったんです」「すごく申し訳なかったんですけど、僕は「あなたは今すぐ管理職を辞めるべきです」と言ったんです。部下が教義によって飲酒が禁じられているイスラム教徒だったり、お酒が飲めない体質の人だったらどうするのか。グローバル企業だったら絶対に許されないことです」「そもそも、コミュニケーションは退社後ではなく、勤務時間内にやるべきです」
我が部長たちは、就任すると必ず部下を飲みに連れ出した。「年間360日、夜は家に帰らない」ことが自慢の人もいた。私はなぜか、1度も誘われなかった。「絶対に行きたくない」という気持ちが、つい顔に出てしまったか。
恒例の「理想の上司ランキング」で、今年もイチローが1位だった。稀代の名選手も、マネジメントができるかどうかは別の話。個人的には、出口氏のような人が理想の上司だ。