2017年2月26日

やっぱり日本が一番?


「マレーシアとタイに行った」と話すと、「よくぞご無事で」と返される。

 金正男殺害事件の数日前に、クアラルンプール空港を通過した。人違いで美女に抱きつかれ、顔にVXを塗られる可能性もゼロではなかった。

そう考えれば、たしかに。

昨日、病院に送迎したSさんにも「よくぞご無事で」と言われた。彼女はかなり前、ツアーで訪れたパリで、ホテルの部屋からスーツケースを丸ごと盗まれたという。
「やっぱり日本が一番ね」というので、「当時は日本人が金持ちだったから。今は狙われることもないかも」と答えた。寂しそうな顔をした。

 外国は危ないから行きたくない、という人は多い。

以前、出張で泊まったカブールやムンバイのホテルには、その後テロリストが侵入し、銃撃戦で多くの犠牲者が出た。イスラマバードで滞在したホテルは1年後、爆弾を満載したトラックが突っ込み、全焼してしまった。

 アフガニスタンやパキスタンへは、そもそもテロ関連の取材で行ったので、これは想定の範囲内。

 でもここ数年、ブリュッセル空港やイスタンブール空港、パリのルーブル美術館でもテロが起きている。欧米もアジアも、先進国も新興国も、世界中どこで何があってもおかしくない。

それに比べて日本は、まだ治安が保たれている。それは、移民や難民をほとんど受け入れない、日本の閉鎖性がもたらしている面がある。

多民族国家や、移民を受け入れてきた国にくらべると、日本の社会は均質。そして、とても排他的だ。安全である代わりに、居心地の悪さを感じることがある。

 あまりにも多様性のない社会がもたらす、閉塞感。

人はこうあるべきという、果てしない同調圧力。

電車で隣の人が何を考えているか、ある程度見えてしまう「一億総ムラ社会」。

 個人的にはかなり苦手な環境だ。

そんな日本を飛び出して、夫婦で通う「微笑みの国」タイ。学生時代に初めて訪れ、縁あって3年間、この国で働いたこともある。

首都バンコクは、世界中から人が集まるコスモポリスだ。高架鉄道や地下鉄に乗ると、隣がどこの国の人か、口を開くまでわからない。ゲイやオカマがごく自然に混じり、男女の区別さえあいまいだ。

多様性の極み。それが、たまらなく心地よい。

この街に暮らしていた時、クーデターが発生した。その後も治安が安定せず、時おり爆弾テロや銃撃戦が起きている。

 ニュースだけ聞くと危ない国だが、実際に訪れれば、街は平穏そのもの。事件は突発的、局地的に起こるので、備えようがない。

日本ほど安全でなくても、他者に寛容で、自由と希望を肌で感じるこの国が好きだ。もし事件に巻き込まれたら、その時はその時。運が悪かったと諦める。





2017年2月17日

クアラルンプール点描


 クアラルンプール中心にそびえるペトロナス・ツインタワー、452メートル。その足下をアリになった気分でジョギングする。

 毎朝すれ違う中国系の女性は、タンクトップと短パンから出た色白の手足全身に、花柄のタトゥーを入れている。

今回、タイとマレーシアで多くのタトゥーを見た。欧米からの旅行者はもちろん、ホテルやレストランで接する現地スタッフの、二の腕やふくらはぎからもタトゥーがのぞく。

世界はどうやら、そういうことになっている。

日本の温泉には「入れ墨お断り」の貼り紙。今や、カナダの首相もタトゥーをしている。カナダの首相は日本の温泉に入れないのだろうか。

マレー系の女性たちは頭からショールを被り、長袖長ズボンでジョギング。イスラム教の習慣とはいえ、この常夏の地では暑そうだ。タンクトップの中国系を横目に、黙々と走っている。

インド系は人によって肌を出したり、隠したり。この国はマレー系が人口の65%、中国系25%、インド系が10%を占める多民族国家だ。

それぞれ家ではマレー語や広東語、タミル語などを話す。いちおう、公用語は英語。でも見ていると、同じマレーシア人同士、まったく会話がかみ合っていないことがある。

それでもこの国は回っている。

白昼のKLセントラルで道に迷った。商業ビル入り口で、のけぞって爆睡していたガードマン氏。声を掛けると「オレ知らない」。5分後に同じ場所を通ると、彼は再び熟睡していた。

寝て給料がもらえるなら、私は彼になりたい。

もし自分が雇用主だったら、彼には給料をあげたくない。

マレー系中国系インド系に欧米人も含め、道行く人はよく太っている。99キロまでの体重計が、簡単に振り切れそう。メタボ健診を気にする日本人などかわいいもの。これも世界の趨勢か。

これでは、国際線の機内がますます窮屈になる。

サラリーマン時代、東南アジアや南西アジアでの仕事が多かったが、最後の海外出張はアメリカだった。帰りのワシントンDC発成田行は、所要14時間。満席に近いエコノミークラスで、幸い私の隣は空席だ。

やがて出発時刻。ドアクローズのアナウンスで快哉を叫んだ矢先、最後の客が滑り込みで乗ってきた。

マイケル・ムーア監督みたいな、太った白人男性。片手にマックのフライドポテト(ジャンボサイズ)を抱えて、通路を進んでくる。

こっち来ないで。頼むから通り過ぎて。下を向いて八百万の神に祈った。

ドシドシドシ 飛行機の薄い床に穴を開けそうな足音が・・・真横で止まった。

(オーマイガーーーーーーッ)

「Hi!」「Hi!」

 顔で笑って心で泣いて。

これからこんな場面が増えそうな・・・予感がする。





2017年2月12日

フェイスブックを買う勇気


 モノを買うより、カブを買う方が好きだ。

 気に入ったモノ(やサービス)があると、それを作った会社の株を買う。

 スターバックスが銀座に1号店を開いた頃、「全席禁煙、濃くて苦いコーヒー」が気に入り、さっそく株を買った。当時のスタバは世界展開を急ぐあまり、投資がかさんで赤字体質。株価も大きく下がることがあった。

持っているのが怖くなり、3割上がったところで売ってしまった。

 もし持ち続けていれば、今頃は大金持ちだった。

 グーグルも上場した時に買ったが、その後は乱高下。持っているのが怖くなり、3割上がったところで売ってしまった。

 そのまま持ち続けていたら今頃は・・・

「なんとなく好き」程度で買う株は、持ち続けられない。身銭を切ってみて、よくわかった。

だからフェイスブックが上場したときは、買わなかった。便利そうだが使いこなせない。この会社がどうやって利益を出すのかは、もっとわからない。

FB株はその後、乱高下を繰り返しながら、上場時の数倍に値上がりしている。「よくわからない会社は買わない」方針は、お金持ちにはなれない。



知人が最近、自分が抱えている問題をFBに書いた。

誰にでも悩みはあるが、それを書くのは勇気がいる。ふつうSNSには、当たり障りのないことしか書かない。

そのトピックには「いいね」だけでなく、数多くのコメントが寄せられた。

あえて「弱さの情報公開」をすれば、親身のアドバイスが舞い込む。一緒に考えてくれる人がいれば、それだけでも気持ちが軽くなる。

FBが持つ力と、その使い方を教わった気がした。

FB上で自分の弱さを見せる勇気を持ち、助け合う大切さを知っているのは女性たちだ。私はまだまだ「弱さの情報公開」が苦手。オトコの沽券に関わる、とでも思うのだろうか。

カネも肩書も関係ない本当のつながりを作る。そのためには、沽券に関わっているのは損だ。

「弱さの情報公開」を肝に銘じたい。



「わが子に友だち申請して5年。まだ承認してもらえない」と、別の友は言う。

親に交遊関係を知られたくない。子はそんな気持ちだろうか。

家族のように関係が近いと、かえって使い方が難しいのか。

わからない。

やっぱりFB株は買えない。

2017年2月2日

南国の美容室


あのピコ太郎が、バンコクにやってくる。

当地の日本人社会は大騒ぎだ…かどうか、わからない。

単独公演でどうやって場を持たせるのか。1分で終わってしまわないか。

気になる。



去年も通った、アパートはす向かいの美容室に行く。ここはクリーニング屋も併設されていて、階上はお色気系マッサージ。よくわからない店だ。

 在住日本人が多いバンコクには、日本男子専門理髪店がある。しかめ面の駐在員がたくさんいて、雰囲気が暗い。

 2年前、日本語で広告を出す別の店に行ってみた。そこは歓楽街のど真ん中にあり、ドアを開ければ美容師全員がミニスカート。

 いろいろあって、今回は近場で済ませる。

 クリーニングの受付にいたおばちゃんが、ハサミ片手にやってくる。たしか去年は、専門の美容師さんがいた。いやな予感がしたが、時すでに遅かった。

 左側頭部、後頭部と切っていくごとに「OK?」「OK?」と確認される。部分的には完璧だ。すべてが終わり、改めて鏡をみた。変な頭だ。

 これを合成の誤謬という。

 おばちゃんの笑顔に送り出され、アパートに帰ると妻が爆笑。

日本に帰るころには、少しはマシな頭になっているだろう。

しばらく誰にも会わないで済むはずが、すぐその翌日、妻の友人(現役CA)と会うことになる。

ああ無情。



 頭が変になる前に、バンコクで2人の友人に会った。高校時代の同期生で、ひとりは単身赴任中、もうひとりは偶然、旅行に来ていた。異国の地で30数年ぶり、感動的な再会となった。

フェイスブックがつないでくれた。

マスコミで働いていた時は、自分の居場所を明かすことを控えていた。退職後、今度はスマホを手放してしまった。晴れて自撮りを載せられるというのに。

FBを覗けば、サラリーマンよりも個人事業主の書き込みが元気だ。しがらみがなくなった私も、どんどん近況を書き込もう。

そうはいっても、露骨に自分を宣伝すれば嫌われる。「どこに行った」「何を食べた」「誰と会った」だけでも、自分の「ハレ」の部分しか見せないことになる。

あれこれ悩みつつ、タイからマレーシアの山奥に移動。数日間にわたり、ネット接続そのものから隔離されてしまった。

物理的に発信できないという状況も、なかなか気持ちよかった



肉食女子

わが母校は、伝統的に女子がキラキラ輝いて、男子が冴えない大学。 現在の山岳部も、 12 人の部員を束ねる主将は ナナコさんだ。 でも山岳部の場合、キャンパスを風を切って歩く「民放局アナ志望女子」たちとは、輝きっぷりが異なる。 今年大学を卒業して八ヶ岳の麓に就職したマソ...