「人生を変える南の島々。」という本がある。
この冬はどこに行こうか。パラパラめくっていたら、バリ島やプーケットと並んで、ニアス島が載っている。
手が止まった。
ニアス島。インドネシアのスマトラ島から、さらに海を渡った小さな島。インド洋の大波が打ち寄せ、サーファーの人生を変える島。
10年ほど前、サーフィンもしないのにこの島に行き、忘れられない経験をした。
バンコク着任6日目。その日も外務省や大使館で、タイで働くための手続きに追われた。並行して新居と車探し。夜は仮住まいのサービスアパートで、荷物の山に埋もれていた。
出し抜けにケータイが鳴る。東京本社デスクからだ。
「インドネシアでマグニチュード8.2の大地震発生、すぐ出動準備を」
まだ引っ越しも済んでないのに。正直、ため息が出た。CNN臨時ニュースを見ながら、外が明るくなるのを待つ。
震源地のニアス島は、空港があるメダンから車で10時間、さらに船で10時間の彼方だ。かなり被害があるようだが、情報は錯綜している。
一夜明け、ジャカルタ経由で空路メダンへ。到着ロビーには、CNNテレビの大取材班が陣取っている。
同僚のシンガポール特派員は、すでにニアス行きの船に乗った。マニラ特派員も、隣のシムルエ島に向かっている。気ばかり焦るが、夜を徹して動くより明朝、一気に飛行機で海を越えることにした。
市内のホテルはどこも満室。怪しげな男に連れられて、窓のない連れ込み宿で、見知らぬ街の夜を過ごす。
翌未明、外は土砂降りの雨。バイクに座席をくくりつけた3輪タクシー「ベチャ」をつかまえ、ずぶ濡れになって空港に向かう。途中、検問所で「ベチャは空港乗り入れ禁止」と言われ、50キロの撮影機材を抱えて立ち往生。通りがかった車を強引にヒッチハイクして、なんとか空港ターミナルにたどり着いた。
ところがニアス行き定期便は、救助隊員らですでに満席。東京から来た、NテレビとS新聞の取材班も足止めを食っている。3社で有り金をはたいて、古ぼけたプロペラ機をチャーター。呉越同舟で乗り込んだ。
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