2016年7月10日

職場の風景


 妄想で自由へ羽ばたいていたサラリーマン時代、タイトルに魅かれて「働かないってワクワクしない?」という本を読んだ。

著者の米国人は、29歳で会社をクビになってから、「クリエイティブな失業者」を目指した。働くことの意味を深く掘り下げ、自費出版したこの本は各国でベストセラーになった。

ところが邦訳版は、しばらくして絶版した(最近ようやく復刊)。amazon で取り寄せて読んだ原著の方が面白く、翻訳は切れ味に欠ける。だが、日本で売れなかったそもそもの理由は、このような生き方を社会が許容しないからだ。

この国では、組織に属さないだけで「ニート」「フリーター」と呼ばれる。

著者は、仕事を辞めて幸運だと感じた理由に「何も決まらない1時間以上の会議」「ベビーブーム世代が辞めないので昇進できない」「裏切りや作り笑いを伴うオフィス内の権力闘争」「満員電車での通勤」と書く。アメリカも日本と同じだ。

以下、前の会社で実際に出会った職場の風景。これらも万国共通? 日本企業でしか味わえない、得難い経験だったのかも知れない。

   意味もなく夜中まで会社にいる人

夜、会社を冷暖房完備の暇つぶし場所にしている人がいた。早く帰っても、どうせ家庭には自分の居場所がないからか。パソコンに向かっているので、一見仕事をしているように見えるが、成果物は生まない。これを長時間労働と呼べる? かくして、日本の労働生産性は先進国最低。面白いのは、職場にいる時間の長さがプラスに査定されることだ。

② 限りなくモチベーションの低い人

低迷している業界の企業では、上に行くほどポストがなくなる。その結果、閑職に追われる人が出てくる。過去の栄光にしがみつき、働かない割にプライドは高い。新聞6紙を丹念に読み、ランチを食べて居眠りすれば日が暮れる。それでも年収1千万、年功序列バンザイだ。若手社員の鋭い視線に耐えるのが仕事か。明日は我が身・・・

   ゴマすり器

年の順に中間管理職になり、社内に幽閉される。そこで聞こえてくるのは、歯が浮くような部長へのお世辞。現場仕事を取り上げられてマネジメントに回ると、そこからは口先の勝負。その技がない人は、私を含めてイエスマンになる。権限はないのに責任だけ重い、つらいマネージャー稼業の数少ない役得は、人間観察。

   職場での作り笑い

つまらないおやじギャグで、周囲を凍り付かせる上司。結果で評価される現場で働く人は、平気で無視する。ところが中間管理職は、そうはいかない。上司の心証を良くすることは、とても大切。給料のために、一緒に笑う。今、こういう滑稽な場に参加できないのは、少し寂しく、とても清々しい。

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