東ティモール大統領選取材の帰り道、首都ディリからバリ島デンパサール経由、空路バンコクに戻った。
出発が遅れ、2時間あった乗り継ぎ時間は50分に。デンパサール到着後、急いで乗り継ぎカウンターに行く。航空券とパスポート、空港税用の現金を預けさせられ、「職員がチェックインを代行するので、座って待て」と言う。こんなやり方、初めてだ。
バンコク行の出発間際になって、ようやく職員が戻ってきた、と思ったら、
「あなたの荷物はディリに積み残された。明日の便で送るから、そのままバンコクに向かって欲しい」
と、有無を言わさず乗り継ぎ便に押し込まれた。
ディリ空港は滑走路が短く、乗客が多いと、積みきれない荷物を残したまま離陸してしまうそうだ。仕事がらみの旅なので、ハプニングを面白がる心の余裕はなかった。
機内で空港税のお釣りを数える。米ドルで払ったのに、お釣りはインドネシア・ルピア。しかも足りない。
バンコク到着後、荷物紛失カウンターで届を出す。毎日、空港に問い合わせの電話を入れるが、荷物は一向に届かない。そのうち、次の出張が迫る。
一週間後にようやく、「荷物がバンコク空港に到着した」との連絡を受けた。
空港で、愛用のドイツ製スーツケースと対面。なぜか、汚い紐でグルグル巻きにされている。不吉な予感を覚えながら手に取ってみると、ダイヤルロックがバールでこじ開けられた形跡がある。
あわてて中を改めると、大事なノートパソコンが消えていた。
私のスーツケースをX線検査機で透視し、パソコンを見つけたのだろう。金目のものだけを効率よく抜き取っている気配を感じる。空港のセキュリティ担当者が、ドロボーとグルになっているとしか思えない。
めぼしい所持品には保険をかけてあった。保険会社との交渉で、2年落ちの中古パソコンは、買った時の値段で払い戻された。おかげで、最新型を買いなおすことができた。
盗ったドロボーと盗られた私。2人とも得してしまった、と言えなくもない。
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