ひと月後、議会選取材でふたたび東ティモールへ。盗難に遭ったデンパサール空港を避け、オーストラリア・ダーウィン経由便を予約した。帰路ダーウィンに1泊が必要だが、ロストバゲージはこりごりだ。
ダーウィンは、第2次大戦で日本軍の空襲を受け、犠牲が出た。いまだに反日感情があると聞く。ジャカルタ支局のS記者は以前、ダーウィンの入管で1人だけ別室に連行され、執拗に取り調べられた。
私もダーウィン空港に着き、入国審査の列に並ぶ。東ティモール・ディリ便は小さなプロペラ機で乗客も少ない。あっという間に順番が来る。
恐る恐るパスポートを差し出す。ポン!と勢いよくスタンプが押され、簡単に入国できた。
日本人かどうかは問題でなく、単に人となりを見ているのだろう。品行方正、謹厳実直な人柄がにじみ出たようだ。
翌日、シンガポール経由で順調にバンコクへ。ところが、待てど暮らせど、我がスーツケースが姿を現さない。
ターンテーブルの荷物がどんどん捌けて、ついに最後の一個が持ち去られる。ゆっくりと、ベルトが止まる。
やれやれ、まただ。東ティモール出張は鬼門だ。
ふたたび訪れた、バンコク空港遺失物カウンター。職員の話では、私が乗り継いだふたつの航空会社は提携がないので、シンガポールで荷物をピックアップし、再度自分でチェックインし直す必要があったそうだ。
数日後、無事にスーツケースが戻り、今度はしっかり中身も入っていた。
別の出張では、アフガニスタン・カブールからUAEのドバイに飛んだ。カブール空港のチェックインカウンターで
「もし荷物がなくなっても、航空会社に責任を問わない」
という書類にサインを迫られた。しないと乗せてくれない。
この時は無事、荷物を回収できた。
計3回経験したロストバゲージは、いずれも帰り道や、時間に余裕がある企画取材の途上だった。もし事件取材の途中だったら、と思うとぞっとする。
米誌ニューズウィークが、「世界のエアライン安全度ランキング」を発表している。リストを下から見ると、「最も危険」と評されたアリアナ・アフガン航空はじめ、ワースト100社のうち19社に乗ったことがあった。
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