2015年11月15日

アジアで走れば①


早朝ジョギングで派手に転んだ。

場所は駅前。すぐ起き上がり、何事もなかったような顔をして走り続けたが、恥ずかしかった。

家に帰って調べてみると、手のひら、肘、膝から出血している。

今までだったら、路面に凹凸があっても、とっさに体勢を立て直せたはず。バランスや筋力が衰えてきたとしか思えない。また鍛えなおさないと、この冬にバンコクの悪路で走ったら骨折ものだ。



話は飛んでパキスタン。バンコク駐在時代に、イスラマバード・マリオット・ホテルを出張でよく利用した。

ライティングデスクの引き出しに、ジョギングマップが入っている。タフでなければエリートにあらず、旅先でも運動を欠かさないアメリカ人ビジネスマンを顧客に持つ、米系ホテルらしい気配りだ。

単純なアメリカ人たちと一緒にはされたくないが、私も相当なジョギング中毒。学生時代から30年来の習慣で、

「走らないと病気で死ぬ」

と本気で思っている。

出張にもシューズ持参で、隙あらば走っていた。



ここイスラマバードでも、さっそく地図片手にホテルを飛び出す。

混沌のパキスタン。路上はホームレスや聖職者、馬やロバからテロリストなどで埋め尽くされ、普通はとても走る気になれない。だが、首都イスラマバードだけは例外。整然とした計画都市で、弁護士などのホワイトカラーや富裕層が多く住む。歩道も整備されていて、外国人が走っていても違和感なさそう。

空気が乾いて、気候も程よい。

気持ちよく走り出す。バンコクからの長いフライトの疲れが、汗とともに流れていく。

地図に従って角を曲がる。

と、道の真ん中が鉄条網で塞がれている。張り詰めた空気。

土のうの奥で人影が動く。自動小銃の銃口が、いきなり私のこめかみに向けられた。

訳もわからずバンザイしながら必死で笑顔を作り、あわててUターン。

ホテルが見える場所まで戻ったところで、どっと冷や汗が流れた。

いつの間にか、泣く子も黙る諜報機関、ISIの敷地に紛れ込んでしまったようだ。

いい加減な地図のおかげで、大変な目に遭った。



※イスラマバード・マリオット・ホテルは、私が泊まった半年後の2008年9月、爆薬を満載したトラックが突っ込んで炎上し、死傷者300人余を出した。現在は営業を再開している。


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