気温マイナス10度まで冷え込んだ日の夕方、510号室のIさんが、師走の空に旅立って行った。
「女の人に裸を見られるのは恥ずかしい」と言って、いつも病棟唯一の男性スタッフである私と風呂に入ったIさん。上機嫌で1時間半も湯船につかり、ナースに怒られたこともあったっけ。
Iさんは、児童福祉に生きた人だった。十数年もの間、児童養護施設から子どもを6人ずつ引き取り、我が子と一緒に自宅で育てた。
亡くなる直前には、成長して看護師になった当時の里子2人が見舞いに訪れていた。
Iさん、今までいろいろな話をありがとうございました。
「カウンセラーという生き方」 井澗 知美著 イースト新書
・「傾聴」…カウンセラーになるためには必ず学ぶもので、カウンセリングの基本となるもの
・相手が発言している言葉だけでなく、その言葉がどのような意味を含んでいるのか、その言葉で何を伝えようとしているのか、その言葉を使ってクライアントが語りたかったことに耳を傾け、受け取ったことをクライアントに伝え返す営みが「傾聴」
・そこに批判や評価はなく、そのまま受け入れることによりクライアントは安心して自分の心を探索することができる。そして、自ら答えを見つけていける
・クライアントに「私はこう聴きましたよ、このように捉えましたよ」と伝えることが「聴く」ということであり、すなわちカウンセリング
・クライアントが助けてもらったと思わないような助け方(=カウンセリング)が理想。「よくわからないけど、カウンセラーの先生と話していたら答えが見つかった」これが最高のカウンセリング
・それを行うには、精神的にタフで、なおかつ肉体的にもタフでないと難しい
・深くて重い苦しみを味わっている人を助けるには、カウンセラー自身がその人の苦しみと同じだけ深く重くなくてはいけない。カウンセラー自身が深くて重い苦しみを味わったなら、それと同じ種類の苦しみを味わっている人だけ、救うことができる可能性がある
・カウンセラーはクライアントを利用してはいけない。クライアントを支援することで自分が気持ちよくなってはいけない
・カウンセラーは自分という器を使ってクライアントと向き合うため、自分と向き合うことが避けられない。「メタ認知」とは、自分のメガネを通して人や物事を見ていることを自覚して、俯瞰してみること
・人との違いを楽しみ、面白いと思えることがカウンターに求められる資質