2022年11月17日

看護助手、焼き芋屋になる

 

 ランチ休憩を終えて病棟に戻ると、いきなり看護師さん数人に囲まれた。

「ハイ、早くこの中に入って!」

 言われるがまま、車体に「やきいも」と大書された段ボール製軽トラックに乗り込むと、首に手ぬぐいを巻かれ、メガホンを手渡された。

「い~し、や~き、いも~♪ おいも~おいも~おいも~♪ は~やく来ないと、行っちゃうよ~♪」

 看護師さんが吹くオカリナに合わせて、歌わされる。

 なんだなんだなんだ! こんな業務、就業規則にあったっけか?

 担当医も一緒に、賑やかに廊下を練り歩き、焼き芋を病室に配って回った。

 すると、ここ数日、病院の食事には一切手をつけなかった504号室のカワベさんが、ふた切れを完食した。

 患者さんも嬉しそうだったが、気がつくと、自分がいちばん楽しんでいた。

 

再び「死にゆくあなたへ 緩和ケア医が教える生き方、死に方、看取り方」 アナ・アランチス著 飛鳥新社 より。

・医療スタッフは健康の分野で働いているのに、私生活では不健全で不幸せに陥りがち。病的なまでに人の世話をし、奉仕し、役立とうとしてしまうが、自分を大事にしないで他人に施していばかりいることは決して良いことではない

・人を助けることが自分の使命だと考える医療スタッフは、人に何かを与えるばかりで、人との本当のつながりを築くことはない。医療スタッフと患者の関係は、本物の人間関係ではない

・医療スタッフは患者の前では慈悲深い仮面を被っている。与えるだけで、受け取ろうとはしない。患者の真の人間性に触れることはできず、1日が終われば疲弊する

・他者に全人的なケアを施す仕事はすべて、まずは自分自身を、自らの人生をケアしてこそ意味を成す

・専門分野の研さんを積み、人間性を磨き、セルフケアを欠かさないこと。セルフケアでいつも自分自身のバランスを保つ必要がある。セルフケアなくして最善を尽くすことはできない

・自分を幸せにすることと、死にゆく人を支えることはつながっている

・よく生きるための最も簡単な秘訣は、次の5つを心がけること

 感情を表す

 もっと友人と過ごす

 自分を幸せにする

 自分のための選択をする

 人生に意味を成すために働き、仕事を目的にしない



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