職場の上司をブログに書くなんて、危険どころか、ほぼ自殺行為だ。
でも私の上司は、とっても面白い人。
うう、誰かに話したい。もう我慢の限界だ。
えーい! 書いちゃえ。
初出勤の日、上司のまりさんは大きな段ボール箱を両手で抱えて、ドアを背中で押しながら入ってきた。
年度始めは荷物が多いのかな…?
でもその翌日も、そのまた翌日も、まりさんは段ボール箱を両手で抱えて、後ろ向きに出社してくる。中身は普通に、A4ノートパソコンや書類だ。
ここは東京丸の内じゃないから、コーチの本革トートは必要ないとは言え。
「キユーピーマヨネーズ450グラム20本入り」と大書された段ボール以外に、何か入れ物ないのかな。
昼休み、まりさんのランチは、レトルトカレーとパックライスだった。
たまたま今朝は寝坊したのかと思ったら、翌日もその翌日もレトルトカレー。「新宿中村屋のチキンカレー」と「サトウのごはん」が定番だ。
9か月たった今では、冷え切った自分の弁当より、まりさんが頬張る熱々のカレーが、よっぽどおいしそうに見える。
桜陰学園高→聖心女子大という、バリバリ女子校出身者のまりさん。
曰く、
「桜陰の休み時間は、学校が終わってから寝るまで、どういう時間割で何を勉強するかが話題だったよ。クラスメートは弁護士志望のガリ勉ばっかり」
「その後で聖心に入ったら、入学式で学長がいきなり『皆さんにはそのうち、白馬に乗った王子様が現れますから』だって。真逆だったわー」
大学で彼女が入部したワンダーフォーゲル部は、コーチが「グループ・ド・ボエーム」という山岳会から派遣されていた。当時、国内外の岩場で初登攀争いを繰り広げた先鋭的クライマー集団だが、アルコール中毒者たちでもある。
「免疫のない乙女が、いきなりそんな男たちに出会って、酒の臭いが男の臭いだって、ず~っと思い込んでたよ。初代コーチのSさんは、42歳でアル中で死んじゃった」
数年前にお母さんを亡くし、東京の実家を売却した。まりさんは7人きょうだいなので、遺産も7分の1。クルマを3台、軽のジープと軽のハッチバックと軽トラックを買って、きれいに使ってしまったらしい。
「老後の資金が心配だわー」
まりさんは9DKの大きな家で、一人暮らししている。
「Dは土間でKは蔵だけどね、ウチの場合」
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