2021年12月25日

婚活サイトの世界

 

以前なら出会うはずのない、生い立ちも仕事も異なる男女が、インターネットを通じて結ばれる。

 アメリカでは、マッチングサイトを通じて交際、結婚に至るカップルが、増えているという。

そしてその波が、非婚化が進む日本にも上陸した…?

 

57歳で婚活したらすごかった」 石上賢介著 新潮新書

 離婚歴のあるフリーライターが、婚活アプリに登録してからの一部始終を語っている。率直かつ、タイトルから受ける印象よりマジメな本だ。

 ちょっと中身をのぞいてみると…

・婚活アプリの顔写真は大事。30代を過ぎれば、人柄の良さも悪さも必ず顔に表れる。男女とも、優しく微笑む人で性悪な人は少ない。きつい目で優しい人も少ない。笑っていても、性格のきつい人の目は厳しい

・年下を好むのは男の傾向だと思っていたが、女性も容姿に恵まれ、婚活市場での価値が高いという自覚があると、年下の男性を求める

・婚活アプリで、複数の男性会員にアプローチされている女性の多くは強気だ。「どんなふうに私を楽しませてくれますか?」「何をごちそうしてくれますか?」と言ってくる

・バブル時代を知っている女性は、概して食事からクルマまで男に求めるレベルが高い

・「私どもの結婚相談所では、結婚してもがんばって働きたい人は少数派です」「できれば仕事をしないで子育てに専念したい人が多数派でしょう」(ある結婚相談所スタッフの証言)

 著者は婚活アプリを通じて、いろいろ辛い目にあう。

・「40代女性に『クソ老人』と罵倒された。詐欺にあいそうにもなった。高額な服や靴を買わされたこともある。そんな経験も、時間がたてばエンターテインメントだ」

 そして最後に、こんな感慨に至る。

・「『誰かとともに生きたい』ではなく、『誰かのために生きたい』と思えるぐらいの心のゆとり、経済的なゆとりを持ってこそ、婚活は成就するのではないだろうか」

 

 昨夜、クリスチャンの知人にくっついて、小さな女子修道院を訪れた。白髪のシスターに混じって受けたクリスマス礼拝で、司祭が言った。

「愛とは、与えつくすものです」

 婚活サイトで得られる境地と、信仰から得られる境地。

 ほんのちょっぴり、似ているような…



2021年12月18日

わが家は大食漢

 

 東京のコロナ感染者が、毎日30人を下回っている。

 内心ホンマかいな?と思いつつ、1年ぶりに、トーキョーへ行ってみた。

 新宿行きの「特急あずさ」は、空席だらけ。帰り道、終点・松本まで残っていた乗客は、同じ車両に2人だけだった。

「人流」いまだ回復せず…?

 今回の宿は、「パリのアパルトマンのような」銀座のプチホテル。インバウンドが途絶えて、どのホテルも空いている様子。

 夜は友人たちと、銀座のスペイン料理や南インド料理のレストランに繰り出した。こちらは逆に超満員。友人の声が聞こえないほどの賑わいようだった。

「黙食」は、もうやめたみたい。

 

 東京で出会ったひとつの親切。

 ホテルの隣で工事をやっていて、騒音が部屋まで入ってくる。ダメもとで、フロントに部屋の移動を頼んだ。「逆側はツインルームしかありませんが…」と、差額なしで広いツインルームに替えてくれた。

 東京で出会ったひとつの不親切。

 待ち合わせに遅れそうになり、大通りに出てタクシーを拾った。目的地に着いて財布を見たら、ぴったりの金額を払えそう。小銭を数えて差し出し、ふと目を上げると、ほんの10数秒の間に、メーターの金額が上がっていた。

 そんなのあり? 車は停めても、メーターは止めない運転手…

 

 留守中、天気予報によると、蓼科のわが家は氷点下まで冷え込む。

これまで冬に水道管を凍らせて、給湯器と風呂場の蛇口をぶっ壊している。そのたびに、かなりの出費を強いられた。

うっかり屋内の水回りを破裂させると、家じゅうが水浸しになるらしい。

 ビビりまくって、旅に出る前に、屋外の凍結防止ヒーターをONにした。風呂場と洗面所とトイレの床暖房も、入れっぱなしにしておいた。キッチンの水栓まわりも、電熱線でグルグル巻きにした。

スマートメーターのおかげで、自宅の電力消費量が、出先からスマホで見られる。優雅な銀座ホテルライフの夜、ふと気になって、中部電力のサイトへ。

誰もいないわが家は、主がいる時の1.5倍の勢いで、黙々と電気を食べていらっしゃるようだった。




2021年12月10日

電車に駆け込まない人

 移動の足がJRや地下鉄だった東京時代、発車のベルが聞こえると、たとえ急ぎの用でなくても、息せき切ってホームを目指した。

滑り込みセーフで間に合えば、得した気分。目の前でドアが閉まると、すごく損した気分。どうせ数分後には、次の電車が入って来るのに…

 会社勤めがなくなっても、田舎に引っ越すまで、その癖が抜けなかった。あれは一種の集団心理だと思う。もっと優雅に暮らせばよかったなぁ。

 ところが、この人は違った。

階段の中腹に差し掛かったあたりで、ついに発車を告げる甲高いベル音が鳴り響いた。「まもなく、扉が閉まります」 私は思わず駆け出した』

『「俺は走らねえよ」 振り向くと、落合が薄っすらと笑みを浮かべていた。私は唖然とした。落合はこの期に及んでも歩いていた』

『周囲に流されない、他に合わせない。それが落合の流儀だろう。だが、あらかじめ指定席をおさえた新幹線が今まさに目の前で動き出そうとしている。そんな状況でさえ、自らの歩みを崩そうとしない人間を私は初めて見た。そんな生き方があるのかと、思った』(「嫌われた監督」 鈴木忠平著、文藝春秋)

プロ野球の名打者として、3度の三冠王に輝いた落合博満。その後、監督を務めた中日での8年間を、当時スポーツ紙記者だった著者が辿る。

「オレ流」と言われた落合の突出した個は、読んでいて凄味さえ感じる。

『どの選手に対しても、落合は「がんばれ」とも「期待している」とも言わなかった。怒鳴ることも手を上げることもなかった。ケガをした選手に「大丈夫か?」とも言わなかった。技術的に認めた者をグラウンドに送り出し、認めていない者のユニホームを脱がせる、それだけだった』

『「俺がここの監督になったとき、あいつらに何て言ったか知ってるか? 球団のため、監督のため、そんなことのために野球をやるな。自分のために野球をやれって、そう言ったんだ」』

そして、『言葉を信用せず、誤解されるくらいなら無言を選んだ』

 周囲に流されず、個を貫けば、時として反感を買う。7年間で優勝3度の実績を残しながら、落合は突然、球団から退任を告げられる。

 結果が全てのプロの世界で、結果を出し続けている指揮官が、なぜ追われるのか。落合が去ると決まった日からの、彼のチームは神がかり的だった。その後20試合を1532分けで駆け抜け、首位ヤクルトを抜いて優勝した。

『理解されず認められないことも、怖がられ嫌われることも、落合は生きる力にするのだ。万人の流れに依らず、自らの価値観だけで道を選ぶものは、そうするより他にないのだろう』

『そして私を震えさせたのは、これまで落合のものだけだったその性が、集団に伝播していることだった』

 決して爽やかなスポーツ・ノンフィクションではないけれど、全476ページ、読み応えあります。



2021年12月3日

男だってピンク

 

 靴下専門店で、小学生の女の子へのプレゼントを選んでいた時。

なんとなく、ピンク色の靴下ばかりを手に取っていた。

そして、はたと思い出した。

あの子は、青が好きなんだっけ…

 

自分自身(57歳男)はピンク色や花柄が大好きで、ピンクのシャツやジーンズを着て街を歩いている。それでも、「ピンクは女の子の色」という無意識の偏見が、確かにある。

 

「ピンクのお洋服着てるから女の子かと思ったわ~」

世の男の子たちも、いまだにこんな言葉をかけられているという。「#駄言辞典」(日経BP)には、ジェンダーにまつわるステレオタイプから生まれる、さまざまな「駄言」が満載だ。

 被害者は圧倒的に女性だが、男性に向けられる言葉としては、

「男なんだから黙って働けよ」

「男のくせに泣くな」

「やっぱり男の子だね~」(車好きの保育園児に)

「監督を男にしたい」(あるプロ野球選手の発言)

「男だろ」

「男なのに情けない」

「男のくせに言い訳するな」

「男は度胸」

「それでも男か」

「○○付いてんのか」

「デート代は男が払うの、当たり前でしょ」

 

 男らしさって、何? 度胸や車好きに性別は関係あるの?

「職場では長時間残業、休日出勤、はたまた転勤にも柔軟に対応し、私生活では女性をデートに誘い、愛の告白も自分からするなど関係性をリードして、結婚して子どもを持ち、家も買って人生のさまざまな場面における『達成感』を得なければいけない。そんなプレッシャーに常に耐える性、それが男性だ」(「男性学」研究者・田中俊之さんの著書「男がつらいよ」より)

 

 今年の新語・流行語大賞に、「ジェンダー平等」という言葉がトップ10入りした。女性ならでは、男性ならではの「生きづらさ」の解消には、ジェンダー平等の考え方が欠かせない。

「男のくせに」ピンクの花柄を着た、「甲斐性なし」の「スイーツ男子」、ここにあり!



肉食女子

わが母校は、伝統的に女子がキラキラ輝いて、男子が冴えない大学。 現在の山岳部も、 12 人の部員を束ねる主将は ナナコさんだ。 でも山岳部の場合、キャンパスを風を切って歩く「民放局アナ志望女子」たちとは、輝きっぷりが異なる。 今年大学を卒業して八ヶ岳の麓に就職したマソ...