顔を洗いながら、何げなく風呂場のドアを開けた。
ん? ナイロンタオルやコンディショナーが、床に散乱している。
そして次の瞬間、濃いグレーの毛をまとった、手のひらサイズの生きものと目が合った。
ついに、ハーシーズ盗み食い犯人の正体見たり!
やっぱりネズミだったか。
しっぽを振りながら、ヨチヨチ逃げていく。
つい先日も、キッチンの米袋に穴を開けられた。計量カップの中には、これ見よがしの黒い糞が。
ムラムラと敵愾心が湧き起こり、とっさに手持ちの最強兵器「ハチ・アブ用アースジェット」を、チューめがけて噴射!
去年の夏、スズメバチが軒先に巣を作った。家には蚊取り線香しかなくて、巣の下で焚くも効果ゼロ。妻に笑われた。今回の武器も、いささか頼りない。
窮鼠猫を噛む、という。「窮鼠僕を噛む」事態だけは避けたくて、3メートルも離れて射撃し、効果を確認せずにドアを閉めた。
そして森の家を出て、一目散に松本のマンションへ。玄関で愛用のピンクのKEENを履こうとして、ゴロっと何かが足裏に触った。何個めかの盗難ハーシーズが、中に入っていた。
縄張りの主張? ここ、ぼくの家なんですけど。
前回のブログを読んだ友人たちから、多くの関連情報が寄せられた。
「ロシア留学時代、ゴキブリホイホイにかかったネズミを、寮のおばちゃんが平気で踏んづけて、ゴミ箱に捨てた」
「ネパール滞在中、至る所に出没するので、四六時中恐れおののいていた」
「カリフォルニアに住んでいた頃、コーチのかばんをかじられた」
「ロンドンのホテルで、部屋や廊下を走り回られて夫が不眠に」
「バグダッドの宿舎の、巨大ネズミを思い出した~」
なかなか話がグローバルだ。
「職場のチョコを食べられる事件が多発」
「レーズン、スキムミルク、アーモンドの大袋の端っこだけかじられて、全部捨てることに」
大人たちが恐れ、恨む一方で、子どもは偏見がない。
「ウチの子は、粘着シートにかかったネズミをスケッチしてた」
「娘に話したら、そんな感じのネズミだったら、うちにも来て欲しいって」
数日後。仕事もあるので、森の家に帰る。ヤツがいなくなっていることを祈りつつ、こわごわ風呂場のドアを開けてみると…
床に落ちたタオルの上で、眠るようにこと切れていた。
以来、夜中の物音はしなくなったが、食べ物をS字フックで天井から吊るすこと、靴を履くときは裏返して振ることが、習慣になってしまった。
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