2021年6月11日

ネズレス、デスモア、チューコロ

 

 4泊5日の旅から戻った夜。

 歯磨きの最中に、妙なものを見つけた。

 洗面所の片隅に、銀紙に包まれたチョコがふたつ。ちょこんと置いてある。

 出発前に、輸入食品店でハーシーズの大袋を買った。確か、涼しい廊下に置いて出たはず…

 いったい誰が、何の目的で、私のハーシーズを、こんな所に? 

 恐る恐る拾い上げると、銀紙の角が破れて、チョコっとかじられていた。

犯人は、人間ではなさそう。

 では、わざわざチョコを廊下から洗面所まで運んで食べるイキモノって…いったいナニモノ?

 翌朝、バスルームに別のハーシーズを1個発見。

玄関先にも1個。

押し入れの洗濯カゴの中に、1個。

そして下駄箱の、愛用の青いシューズの中にまで…

 みんな、少しかじっただけの食べかけだ。行儀が悪いというか、茶目っ気があるというか。犯人は、空腹でどうしようもない、というわけではなさそう。

 近くに、黒米そっくりの糞が残されていた。同じく田舎暮らしをしている友だちに聞くと、「それはネズミ!」と断定した。

 ネズミか~

 友だちも困っているらしく、ネズミ駆除には「ネズレス」より「デスモア」が効く、と力説する。

 デスモア。

 確かに効きそうだが、それにしても情け容赦ないネーミングだ。

 ほかに「チューコロ」という商品もあるらしい。

わが家は八ヶ岳中腹の標高1600メートル、ミズナラやカラマツの木が密生する森にある。動物たちの世界に、私の方が間借りしているようなものだ。

 この前の晩も、何者かが屋根裏で、ガサゴソ動き回っていた。なにやら羽の生えた生きものの気配は、コウモリだろうか。

 今回チョコを盗んだ犯人は、糞のサイズからいって、ごく小さなネズミ。できれば仲良く共存を図りたい。

家じゅうの菓子類を集めてかごに入れ、S字フックで天井からぶら下げた。「デスモア」の前に、まずは守りを固めて様子を見よう。

友だちからは、できた人だね~と感心された。

でもこれ以上、とっておきの輸入チョコを横取りされたら、その時は…

デスモア発射用意!



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