「ずいぶん近くにお住まいなんですね…」
フロントで自宅住所を記入していたら、ホテルマンが訝しげな顔をした。
それもそのはず、今晩泊まるそのホテルは、自宅から歩いて5分だ。
「春休みに知人を招待するので、事前に自分で泊まっておこうと思って…」
とっさに、そんなセリフが出た。気のせいか対応がよくなった。
緊急事態宣言下、伊豆半島の友人を訪ねた。静岡県に入ったとたん、「県をまたぐ移動はお控え下さい」の掲示板が並んでいた。
東京はともかく、隣の県に行くのもダメなの。
じゃあ、もっと近くなら? 長野県が、県民限定の宿泊割引を始めた。県内のホテルなら、最大5000円offで泊まれる。そして、ここ松本は観光地。自宅から徒歩圏内に、10軒以上のホテルがある。
旅行代わりに、窓から見えるホテルを泊まり歩くことにした。
果たしてこれは「マイクロ・ツーリズム」?
マイクロすぎるツーリズム。
ホテルを一歩出れば、いつも暮らす街の景色だ。でも料理、皿洗い、洗濯、掃除はしなくていいし、バスルームは寒くないし、タオル類は洗濯したて、シーツも糊が効いて快適だ。
平日のホテルは、出張族ばかり。優雅にコーヒーをお代わりしながら朝ご飯を食べている間に、周りのテーブルは3回転している。
ちょっといい気分。
ホテル滞在中、地区の「燃えるごみ」収集日が来た。家のごみを出しに行きたくなったが…なんとか堪えた。
【自腹で泊まってみたホテルの寸評】
「ホテル・ブエナビスタ」 エグゼクティブ・フロアに泊まれば専用ラウンジが使え、コーヒーやスナック類がタダ。夕方はアルコール類も無料になる
「松本丸の内ホテル」 松本城に近い。戦前に建てられた銀行を改装した石造りの建物で、登録有形文化財にもなっている。サービスはあか抜けない
「松本ホテル花月」 館内各所に信州の民芸家具が配されている。ホテル周辺にしゃれた飲食店が多くて便利。サービスはどん臭い
「いろはグランドホテル」 開業1周年の新しいホテルで、エントランスにアロマが香る(女性客を意識?)。ソファが心地よいコーナーツインがお勧め
「アルピコプラザホテル」 ほぼ駅前で便利だが、それ以上の価値はない
「JALシティホテル長野」(長野市) 善光寺に近い。最上階16階で供される朝食が出色。コロナでもいち早くブッフェを再開し、60品目を揃える