2020年2月21日

ことばの森


 オンライン英会話のフィリピン人講師は、多くが地方に住んでいる。

「ニワトリが鳴く田舎に暮らす3児の母」が、なぜ英語ペラペラなのか?



先生方は「家ではDialect(方言)で話してるよ」と、口々に言う。

試しに「どこに行くの?」と、地元の言葉でしゃべってもらった。

「サアンカ ププンタ?」~タガログ語(ルソン島など)

「アサカマン パドゥオン?」~セプアノ語(ミンダナオ島など)

「ディインカ マカト?」~ヒリガイノン語(ネグロス島、パナイ島など)

「方言」というより、それぞれ完全に独立した言語に聞こえる。実際、同じフィリピン人同士、英語抜きでは会話が成立しないらしい。

いろいろな単語を教えてもらっていたら、英会話レッスンが、いつの間にかヒリガイノン語講座になっていた。

「マアヨン アドラウ!」(こんにちは!)



東南アジアの国なのに、フィリピンの公用語は英語だ。インド、アメリカに次ぐ、世界3位の「英語人口大国」だという。

フィリピンの「国語」は一応、タガログ語。でもタガログ語を母語としているのは、人口1億人の4割だけ。ほぼ島ごとに、独立した言葉がある。英語は、そんな人たちを束ねる役目を果たしている。

先生に聞くと、早くも小学校の時から、国語(タガログ語)以外の教科すべてを英語で習っている。私立校では休み時間も、英語以外は禁止だという。

何人かは「親の方針で、生まれた時から英語で育てられた」と言っていた。

その英語力を生かして、人口の1割、1000万人が海外へ出稼ぎに出ている。国内でも、アメリカ企業のコールセンターで働く人が多い。

コールセンターでは、「私の英語に少しでも訛りがあると、アメリカ人はすぐ侮辱的な態度を取る」。だから発音を矯正する学校に通って、必死にアメリカ英語を習得するのだそうだ。

先生自身、英語ネイティブではない自覚があるから、「いまだに毎日、英語を勉強しているよ」と謙虚にいう。「自分の発音を録音して、聞く」「ユーチューブでTED Talksを繰り返し見る」など、自らの学習方法を教えてくれる。



「私の両親は、アメリカに植民地支配されていた時に生まれた。だから私は、英語で育てられた。でもスペイン統治時代に育った祖母は、スペイン語を話していたよ」。

ネグロス島の60代、トリナ先生の言葉に、フィリピンの歴史を垣間見た。

レイテ島に暮らす30代のリゼル先生は、

「私の町はワライ語圏。でも私たちの世代は、ワライ語、タガログ語、英語をミックスした言葉で話す。自分がいったい何語を話してるのか、私自身もよくわからないんだ・・・」



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