「幸福は、コントロール可能」
幸福学の第一人者、慶大大学院の前野隆司教授がいう。工学博士として、以前はロボットの研究に携わっていた人だ。
「幸せ」について考えるのは、前は哲学者の仕事だった。今は心理学、脳科学、認知科学、行動経済学・・・サイエンスの領域に移ってきた。
日経ビジネス電子版に掲載されたインタビューによると、前野教授は
「心なんてものはなく、あるように感じているだけ」だという。
我々の意識を動かしているのは、無意識や潜在意識。無意識下の判断を、自分が決めたと感じているだけ。仏教で、自我が存在しないと説いているのと同じだ。
人間には心がないと考えた時、教授は
「ああ、おれはロボットと一緒か」と思ったそうだ。
人間は様々なことを気に病むけれど、心がそう感じているだけ。心がないのだから、死ぬことだって怖くない。
だから、心がないということを受け入れた方が、幸せだと感じるという。
仏教の悟りの境地だ。
金銭欲、物欲、名誉欲が満たされたことで得られる幸せは、長続きしない幸せ。だから「お金=幸せ」は幻想。
その代わり教授は、人間が幸せになる4つの因子を挙げている。
①
「やってみよう!」・・・やりがいのある仕事や趣味で幸せになる。
②
「ありがとう!」・・・自分だけが幸せになるのではなく、周囲の人を幸せにした方が幸せになる。
③
「なんとかなる!」・・・人間は変化した方が幸せになるので、リスクを取ってチャレンジした方がいい。
④
「ありのままに!」・・・他人と自分を比べすぎず、自分らしさをわかっている人の方が幸せになる。
途上国より先進国の方が幸福度が高い。それは、経済が発展して安全欲求が満たされているから。
また、格差が大きい国より小さい国の方が、幸福度が高い。
どの国も、国民を幸せにすべきだとは考えている。ただやり方が違うだけ。アメリカは格差より自由重視。みんなが幸せになるより、努力した人、能力のある人が報われる社会を作った。ブータンや北欧諸国は、平等を重視する。
そして日本は、安全な社会を実現して、生きがいや利他性につながる社会を目指している。
インタビュアーが「大企業で働いている人は、なぜ不幸せに見えるのか」と問うと、
企業は、合理的に利益を生み出す組織。社員一人ひとりは歯車にすぎない。そして、以前の大企業は生涯年収が高かったが、今はお金も大したことない。
「歯車でお金もないんじゃメリットが少ないですね」