2019年10月12日

インターンも良し悪し


 バンコクで記者をしていた頃、日本から学生インターンがやってきた。

 ちょうどタイ政局が荒れていた時期で、毎日反政府デモが繰り広げられた。彼らを現場に案内し、合間においしいイタリアンをごちそうした。

 ミナガワさんはこの旅が初の海外だったが、果敢にも(無謀にも)エア・インディアでやってきた。案の定、帰国フライトが24時間遅れた。彼女を家に泊めて、翌朝空港まで送り届けた。インターンの受け入れは、ちょっと大変。

 一方ムラモト君は、なんとその後、新聞社に就職した。報告を聞いたとき、記者冥利に尽きるというより、罪悪感の方が勝った。

 在学中に仕事の実際を知ることができるインターンは、素晴らしい制度だ。でも新聞社の場合、見せ方が難しい。海外で国際ニュースを追う機会なんて、記者生活のほんの一部でしかない。

 ふだんは国内で、雨の中を立ちっ放しで張り込みしたり、消防無線を聞きながら宿直して、夜中の3時に火事現場に向かったりしているのだ。

 私の学生時代はまだ、インターン制度がなかった。記者稼業の大半を占める泥臭さを知った上で、なおこの世界に入ったかどうか。何も知らずに飛び込んで、いきなり激流に呑み込まれて・・・迷う暇もなくて、かえって良かった。

 ミナガワさんもムラモト君も、APU(立命館アジア太平洋大学)から来ていた。大分県に立地しながら世界80数か国の留学生を受け入れ、教員の半数が外国籍。英語で行われる授業も多い。

 そして今年、一般公募でAPU学長に就任したのが、出口治明・元ライフネット生命会長。かなり思い切ったことを言う人だ。(以下、日経ビジネスより)



30年前、世界の時価総額トップ20社中14社が日本企業だったのに、今はゼロ。日本は、GAFAのような新しい産業を生み出せていない

・「土地・資本・労働力」から、今は「アイデア勝負」の時代。会社で夜10時まで働いてから上司と飲みに行き、家では「メシ・風呂・寝る」の生活では、経済をけん引するようなイノベーションは起こせない

・脳が疲れやすいことを知っているグローバル企業は、残業しない

・年13001500時間労働で2%成長の欧州と、2000時間労働(正社員)で1%成長の日本。これでは「骨折り損のくたびれ儲け」そのもの

・これからは「メシ・風呂・寝る」より「人・本・旅」。早く帰って面白い人に会い、たくさん本を読み、いろんな所に行ってみる。脳に刺激を与えることが、生産性と創造性を引き上げるカギになる

・イノベーションは既存知の組み合わせ。既存知間の距離が遠ければ遠いほど、面白い発想が出てくる

・「変わらなくてはいけないのは、まずは大人です。大人が変わらなくて、どうして若者が変われますか」


Tateshina Japan, autumn 2019

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