2019年7月13日

「コミュニケイションのレッスン」


 NPO活動をしていると、初対面の人と1対1で話す機会が多い。

 ここ数年、日替わりでこの3パターンが繰り返される。

ⓐ 無料の学習塾で、小中学生と一緒に90分勉強する

ⓑ 送迎ボランティアで、高齢者を助手席に乗せて20分走る

ⓒ 日本語教室で、外国人と簡単な日本語で90分会話する

 初対面の人と話すのは、いつまでも慣れない。ⓑだけは運転が主で会話は二義的、時間も短いので、ちょっとだけ楽だ。

ⓒではこれまでベトナム人、中国人、インド人、台湾人、イギリス人、ロシア人、タイ人、アメリカ人、エルサルバドル人らと日本語会話の練習をした。

ある日、夜の仕事をしているらしいフィリピン女性がやって来た。彼女の日本語は流ちょうだったが、真昼の教室の明るい蛍光灯の下では、お互い話題に困った。

 国籍や日本語レベルを問わず、やはり自分と似た育ちの人の方が、話がかみ合う。

そしてお互いカタコトでも、IYouで英語で話した方が親しくなれる。丁寧な日本語は、かえって相手との間に壁を作ってしまうようだ。

そして、ダントツに難しく感じるのがⓐ。特に、小学校高学年~中学生の女子との会話だ。

「疲れた? ちょっと休憩しようよ」と言ってから、彼女との間に、勉強以外の共通の話題が何ひとつないことに気づき、いつも呆然とする。恐怖の休憩タイムだ。

ただでさえ難しい年ごろな上に、生活保護を受けていたり、複雑な家庭環境に育った子もいる。プライベートな話題には、地雷が埋まっている。

 気まずい沈黙が1分、2分と続き、進退窮まってしまう。

小学生の頃から塾で会っていて、ただ一人気軽に話せるのが中1のRちゃん。藁にもすがる思いで、ローティーン女子の世界を教えてもらった。

「Rちゃん、いま一番ハマってるのは何?」

「キンプリ!スポンジボブ!スティッチ!平野ノラ!スプラトゥーン!・・・」

 何ひとつ、わからない。

 机の下でこっそりスマホ検索すると、火星語に聞こえた彼女の言葉は、実はジャニーズの6人組だったり、ディズニーのアニメだったり、お笑い芸人の名だったり、ニンテンドーの対戦型ゲームだったりするらしかった。

 長らく劇団を率いるコミュニケーションの達人、鴻上尚史。その名も「コミュニケイションのレッスン」という彼の著作を読んだ。

いわく、「沈黙しても焦らない」「穏やかに微笑み、体の力を抜き、重心を下に下げる」「そして、深呼吸をひとつ」「あなたの体がゆるんでいる限り、相手の体も自然にゆるみ、気づかないうちに再び会話が始まっている」

 そして、「コミュニケイションは技術であり、技術は場数で上達する」と。

 やっぱり場数が大切なのか。

さあ明日も、コミュニケーションの千本ノックを受けよう。



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