2019年7月20日

看板娘の勇気


 この夏も、レンタカーを2か月借りっぱなし。

 ここ数年、年間3か月以上は借りている。

 ・・・いっそ、クルマを買った方が得かも。

 でも「所有」より「シェア」の方が、なんとなくカッコいい世の中だし。



 親しくしているレンタカー屋さんは、家族経営の小さな店。本業の自動車整備工場を両親が切り盛りし、片隅にあるプレハブで、娘さんがレンタカー業務を一手に引き受けている。

朝8時から夜9時まで年中無休で、「連休が取れるのは正月の2日間だけ」。クルマを返す時は、お母さんがミカンや泥付きダイコンをくれる。

以下は、先日娘さんに聞いた話だ。

 ある日、上品な身なりの女性がクルマを借りにやって来た。その後も何度か、その人から予約が入った。時には、かわいい孫と一緒だった。

 すっかり信用していたある時、返却時間をすぎてもクルマを返してくれない。ケータイに電話しても、つながらない。

 SMSでメッセージを送ると、「いま取り込み中なので、しばらく待って欲しい」と。「次の予約があるので延長はできない」と返すと、とたんに連絡が取れなくなった。

 2日待って、警察に相談した。そして、警察に通報した旨をSMSで知らせた。すると、ほどなくクルマが戻ってきた。

 運転席から降り立ったのは女性ではなく、ガタイのいい見知らぬ男。クルマは無傷だったが、せっかくの禁煙車の車内が、むせ返るほどタバコ臭い。

「延滞料金、違約金と合わせて○○円頂きます」

そう娘さんが告げると、真冬なのにパーカー1枚のその男は、「暑いねえ」と言いながらそのパーカーを脱ぎ捨てた。

バーン! Tシャツ姿の首から腕にかけて、鮮やかな刺青が現れた。

「そ、それで、どうしたんですか?」と私。

「頂くものはきっちり頂きましたよ。決まりですので」

 男と対峙した娘さんは、天井から下がる監視カメラと集音マイクを、無言で指さした。

すると男はパーカーを着直し、金を置いてそそくさと帰っていったという。

「ここで甘い顔をしていたら、お客さんの質がどんどん悪くなりますから」

・・・やるなあ。



 なぜか私たち夫婦には、その年に仕入れた新しい車を回してくれる。

 今年の愛車は、3000キロしか走っていない白いホンダだ。


Diamond Head Beach Park, Honolulu

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