2019年5月17日

SKYFARING A Journey with a Pilot


 ホノルルを離陸したユナイテッド903便が、ジェットストリームを向かい風に飛ぶ。成田まで9時間の機内で読んだ本が、

「グッド・フライト、グッド・ナイト」 マーク・ヴァンホーナッカー著

 著者は英国航空ジャンボ機のキャプテン。アフリカ史を学ぶため大学院まで進んだが、「遅ればせながら、飛ぶことを生涯の仕事にしたいと気づいた」。

 いざフライトスクールに入ってみると、医学生だったり技術者だった人たちが、もう一度、子ども時代の夢を追いかけようと集まっていた。

「授業料は高額なので、新米のパイロットの大半は家を新築するぐらいの借金を抱えている」そうだ。

 念願かなってパイロットになったのが、29歳。しばらくは副操縦士として、ヨーロッパ中を飛び回った。

「朝4時に目覚まし時計のアラームでまぶたを開けると、そこはまだ薄暗いヘルシンキだったり、ワルシャワやブカレストやイスタンブールだったりした。ぼうっとしたまま、ここはどこだろうと考える」

 そういえば・・・立て続けに出張が続いたある朝、私も目覚めた自分がどこにいるかわからなかった。ぼうっとしたまま宿を出ようとすると、チップを渡したベルボーイが、小躍りしながら最敬礼してくれた。

 ふと見た財布の中身は「インドネシア・ルピア」でなく、「フィリピン・ペソ」。そうだ、昨日の夜中にジャカルタからマニラに飛んだんだった。

10000ルピアのつもりで、10000ペソ渡してしまったらしい。日本円に換算するのが怖い・・・

 読み進もう。「宇宙飛行士に言わせると、宇宙からベルギーを見つけるのは簡単」。ヨーロッパで最も人口密度が高く、世界一明るい道路網があるから。

成層圏を飛ぶ旅客機のコクピットからも、ベルギーは「黄色がかったオレンジ色の光の糸が縦横に走っている」ので、すぐわかるという。

ベルギーに住む両親を訪ねた旅で、私も同じ光景を見た。飛行機の性能上、まだヨーロッパへの直行便がなかった時代。安い「南回り便」を選んだ。

途中でマニラ、バンコク、カラチ、バーレーン、アテネを経由し、機内食も5回食べた。窓にへばりついて異国の景色を眺めていると、隣席は日本人バックパッカーから、いつの間にか出稼ぎフィリピン人に代わっていた。

30時間の空の旅が終わり、飛行機が着陸態勢に入る。冬のヨーロッパを覆う分厚い雲を突き抜けると、輝く「オレンジ色の光の糸」が眼下に広がった。

空からの眺めが世界一と、著者を含めた多くのパイロットが推すのがグリーンランド。イギリスから北アメリカへ向かう飛行機に乗ると、離陸後3時間ほどでドラマチックな眺望が始まるという。

少年の心を持つ機長が操縦する飛行機に乗って、次の旅に出たくなった。



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