この春、妻のいとこもハワイに行った。
なんと、今年で22回目だという。
寒い日本を脱出して、常夏の島へ。青い海と空を眺め、ビーチやショッピングに繰り出し、グルメを楽しむ。
多くの人にとって、やっぱりハワイは楽園だ。
たとえビーチと買い物とグルメに興味がなくても、カラカウア通りをそぞろ歩く人たちの楽しげな様子を見ているだけで、幸せな気分が伝染して来た。
でも今回は、楽園でないハワイも見た。
身軽なひとり旅だったので、空港からワイキキ中心部まで、タクシーを使わずに19番バスで往復した。途中、ダウンタウンの裏通りを通った。
急に雰囲気が変わり、街角がゴミと落書きだらけに。そこかしこに、路上生活者らしき人が寝ている。ここで途中下車したら、かなりやばい。
一方でバスの乗客は、空港勤務らしい若い女性たち。楽しそうにおしゃべりしながら、朗らかに笑っている。ガラス1枚隔てて、対照的な光景だった。
滞在中、カピオラニ公園やアラワイ運河沿いをジョギングした。日の出を拝み、早朝の爽やかな風に吹かれて走る足元では、ベンチごとにホームレスがうずくまって寝ていた。
現地に住む知人から、とても怖い話を聞いた。観光でハワイを訪れた日本人家族が、町はずれの公園へストリートアートを見に行った。公衆トイレに寄った父親が、薬物中毒のホームレスに遭遇し、問答無用の暴行を受けた。
顔面を数か所骨折し、病院に運ばれた。手術を繰り返し、ひと月の入院でかかった費用は800万円。今回に限って、海外旅行保険に入っていなかった。完治しないまま、医師同乗で飛行機に乗せられ、帰国していったという。
私が「えひめ丸慰霊碑」に行こうとした時も、「公園の入口でホームレスがテント村を作っているから、走って通り抜けて」と忠告された。確かに、半裸の男たちが奇声を発する異様な雰囲気だった。
日本人がホームレスに抱くイメージとは、まったく違う。薬物中毒者が混じっていて、本当に何をされるかわからない。「アメリカ本土のホームレスが、片道航空券を手渡されて送り込まれている」という話も、現地で再三聞いた。
物価が上がり続けるハワイでは、いまや平均的な住宅価格が約90万ドル。普通に家を持つだけで1億円かかる。そして住処を失えば、簡単に路上生活に転落しうる。日本人のホームレスもいるという。
「ハワイは・・・観光で来るのが一番です」ホノルルに住んで6年目の知人が、しみじみと言っていた。
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