2019年1月26日

子育てシェア


東京から引っ越して、こちらでファミリーサポート支援会員になった。

毎週、3歳と6歳と小1と小2と小4の子どもを、習い事に送ったり、一緒に遊んだりしている。

親たちは、子どもの将来をも考えなければならない。その点、私のような立場は気が楽だ。よその子を勝手にかわいがって、楽しんでいる。

先日、ファミリーサポート支援会員の小さな集まりがあった。

平日の午前中だから、完全アウェーを覚悟した。案の定、私のテーブルは全員女性。子育てを終えた年齢の人が多かった。

Aさんは、シングルマザーの子を夜遅くまで預かっている。夕食を食べさせて、風呂に入れる。ママが迎えに来る頃には寝入ってしまい、抱っこして手渡すのだそうだ。

毎日のように預かる時もあり、少し負担に感じているようだった。

この町には、午後7時以降の託児施設がない。隣の温泉町には、芸者の子を午前4時まで預かる保育園があるが、車で夜道を走らなければならない。

Aさんのような存在が、最後の砦だ。

Bさんは、やんちゃ盛りの男の子を預かる。「置いてあるミカンはバクバク食べるし、テレビのリモコンは壊すし、もう大変!」

Bさんによると、昔は内弁慶が多かったが、いまの子はママの前ではいい子、ママがいないところで大変、なのだそうだ。

「車道をあっちこっち走り回って、私は走れないから大声で注意して。ファミサポ、70歳過ぎたらできないかも」

 Cさんは朝、子どもの家まで迎えに行き、玄関先で30分もママの愚痴に付き合うのだそうだ。「その分の料金も頂きたいぐらい・・・」

子どもだけでなく、大人の面倒まで見ている。

皆さん、言いたいことがたくさんあるようだった。

幸い5人の「我が子」は、手がかからない。小1と小4の男の子は、静かすぎるほど大人しい。小2男子は病気で気管を切開していて、会話には読唇術が必要だ。だから返事の必要もない他愛ないことを、私が勝手にしゃべっている。

6歳女子も障がいがあって会話は不得意だが、その代わりに表情や仕草がとても豊か。非言語コミュニケーションの達人で、会うのが楽しい。

3歳男子はおしゃべり。他の4人の分までしゃべる。動きも活発だ。でも小さいので、いざという時はひょいと抱き上げてしまえば、何も困らない。

今回会った支援会員のAさんBさんCさん、みな真面目で責任感が強い。都合の悪い日は断ってしまう私のような関わり方は、かなり身勝手かも知れない。

ファミサポ事務局の話では、依頼の数に比べて、支援会員が圧倒的に足りないそうだ。依頼する人も支援する人も余裕をもって、笑顔で子育てをシェアできれば、それが最高だ。

Tateshina Japan, Winter 2019

2019年1月19日

今年もホッタラカシ②


 ミヤサカ・ファンドは試行錯誤の末に、「インデックスを使った国際分散投資」という王道にたどり着きました。

 時あたかも、橋本内閣による「金融ビッグバン」の黎明期。個人にも海外投資への道が開かれ始めていました。でもまだ、外国のインデックスに投資することはできませんでした。

 だから金融英語に苦労しながら、海外のネット証券に口座を開設しました。途中でにっちもさっちも行かなった時は、勇気を振り絞って国際電話です。

 相手の英語がわからず聞き返すと、やる気のない声で同じフレーズを繰り返します。一瞬、機械音声かと思いました。外国の金融機関は給料が安いせいか、社員のモラルは総じて低めでした。

 そして苦労の末に手に入れたのが、VT(Vanguard Total World Stock)というニューヨーク上場のETF。一株50ドルで世界47か国8000社の株をいっぺんに買えて、しかも手数料は年0.1%。夢のような経験でした。

 あの日から、かれこれ10数年。ネット証券が国内でもサービス競争を始め、VTも日本で簡単に買えるようになりました。

 さらに、政府主導の「貯蓄から投資へ」という掛け声のもとで、NISAiDeCoといった非課税制度も整いました。

 一部の金持ちが、プライベートバンクとタックスヘイブンを経由して行っていた「税金がいらない国際分散投資」。それがいまや、誰にでも可能になったのです。すごい世の中です。

 さて、資本主義と市場経済の総本山といえばアメリカ。当然、投資教育も盛んなはずです。そのアメリカで、投資のターボエンジンである「複利効果」を、逆噴射させる人々がいます。

自分の収入以上にお金を使い、すぐクレジットカードで借金する。カードローン金利を18%とすると、その借金は4年で2倍になります。8年で4倍。

毎年、大学卒業者より多くの自己破産者が生まれています。

 支出を収入内に収めるのは、日本では常識です。「長期・積立・分散」の株式投資を教科書通り実行できるのも、規律と忍耐に長けた日本人でしょう。

 最近、ボランティア先で知り合ったヒカリさんが、株式投資を始めました。自ら勉強してNISA口座を作り、VTを毎月2+ボーナス月5万円で積み立て開始。自動操縦の仕組みを整えてから、

「では、ほったらかします」。

高らかに宣言していました。

 ヒカリさんは、この春に結婚を控えた20代。時間を最大限に使えます。世界経済の成長×複利効果で、ふたを開ける頃にはすごいことになっていそう。

 自分ももっと早く、この賢明さを備えていれば・・・

「若者は、若さを無駄遣いする」___ジョージ・バーナード・ショウ



2019年1月12日

今年もホッタラカシ


 新春恒例! ミヤサカ・ファンドの運用報告です。

 まず、2018年の市場環境のおさらいから。すべて円ベースです。

 先進国株式-10.7% 新興国株式-18.1% 日本株式-17.8% 先進国債券-2.9% 新興国債券-11.5% ハイイールド債券-4.3% 日本債券+0.1% 先進国REIT11.2% 日本REIT6.7% 原油-26.8% 金-3%

 壊滅的です。11の資産クラス中、実に9クラスが値下がりしました。

 株式市場を国別に見ても、上がったのはブラジル株ぐらいでした。

 このタイミングで自分の証券口座を覗くのは、あまり気分のいいものではありません。でも年に1度は、現実を直視しなければ。

 さて。当期のミヤサカ・ファンドは・・・13%の値下がりでした。

 昨年の夏に「日経平均27年ぶりの高値」「ダウ平均が史上最高値を更新」というニュースを聞き、TOPIX及びナスダック指数のETFをつまみ食い(現金化)して使ってしまったので、正味の運用成績はマイナス10%になります。

 元旦時点のポートフォリオは、株式57%(先進国31%・新興国19%・日本7%)、債券23%(海外15%・日本8%)、REIT17%(海外13%・日本4%)、その他3%でした。

 いくら分散投資を心がけても、ほとんどの資産クラスが「枕を並べて討ち死に」した去年のような環境では、手の打ちようがありません。

でもブラジル株の値上がりを事前に予測することが難しい以上、個人投資家は適切に分散したポートフォリオを保持しながら、市場が低迷から脱するのを待つしかないのでしょう。

むしろ、これだけ株式市場が荒れて、よく1割の下落で済んだなというのが正直なところ。分散投資の威力ともいえます。

従って、今年も何もせず、ホッタラカシにします。

ちなみに、以前は保守的だった日本の年金基金(GPIF)も、今や株式保有比率は50%。北欧ノルウェーの年金基金は、66%が株式です。

当ファンドの57%という株式比率はその中間ですが、インドや中国、ASEANなど新興国株式の比率が高く、数字以上に攻撃的です。

その理由。未来を予測することは不可能ですが、世界の50年先の人口動態は、現在の出生率からほぼ確実に推定できます。

当ファンドは、今後も若者が増え続ける新興国と、先進国でも例外的に人口増加が続くアメリカの成長性に期待したポートフォリオになっています。

少子高齢化で確実に労働人口が減る日本の株は、最小限に抑えます。

投資理論の碩学チャールズ・エリスは、81歳の今も個人資産の100%が株式です。同じく86歳のバートン・マルキール(プリンストン大教授)は中国株を買って、「将来、孫たちにどでかい話ができる!」と豪語しています。

能天気なまでの、2人の積極性。ぜひ見習いたいと思います。



2019年1月6日

最期はマリファナ


年が明け、いよいよ平成が終わる。

 次の次の改元を迎える頃、自分はこの世にいるのかなあ。

 すると、これ以上ないというタイミングで、家人が一冊の本を差し出した。

「人間の死に方」 久坂部羊 幻冬舎新書

これ、実はとても笑える本だ。

主人公は、87歳で亡くなった著者の父親。この人、自分は医者のくせに、根っからの医療否定主義者なのである。

30代で糖尿病になったが、まったく治療しない。まんじゅうやケーキは食べ放題、タバコも120本吸った。

後年、その合併症が出た。足指が壊死して、真っ黒に変色した。

この段階まで進むと、足首の切断しか治療法がない。

それでも彼は病院に行かない。自らインシュリンを打って済ませてしまう。

85歳で前立腺がんと診断されると「しめた!これで長生きせんですむ」。今度も治療や検査をいっさい拒否して、医師と大ゲンカになる。そして言う。

「医者は黙って、患者の言うことを聞いとったらええねん」

 著者もまた、医師だ。でも何もいわずに、父親を見守る。在宅医療で多くの高齢者を診て、長生きがいいことばかりでない、と知っているから。

 足腰が弱って好きなところに行けない。視力の低下で本が読めない。耳が遠くて音楽も聴けず、味覚の低下でおいしいものもわからない。おしめをつけられ、自力では風呂にも入れず、何の楽しみもなく周りの世話になるだけ。

 著者が在宅で診ていた95歳の女性が、しみじみ言ったという。

「先生。私は若いころ、体操すると長生きできると聞いて、一生懸命やりましたが、あれが悪かったのでしょうか」

 それにしても、がんを宣告されて「しめた!」と喜ぶ度量は、並ではない。

 著者によれば、父は「酒は弱く、賭け事もせず、女道楽には無縁の朴念仁」だったが、ふだんから次のようなことを口にしていたという。

・少欲知足(足るを知れば心は満たされる)

・莫妄想(不安や心配は妄想だから、しなくてよい)

・無為自然(よけいなことはせず、自然に任せるのがよい)

 彼が医学の常識を無視して自由奔放に生きたのは、そのために早死にしたり、悪くなってもあきらめるという強い覚悟があったからだ。

そしてその根底には、仏教や老荘思想があったらしい。


 医療に頼りすぎず、自然に、穏やかに死ぬにはどうしたらいいか。余命が計算できる病気にかかり、最期は窓から山が見えるホスピスに入る。これが、今の私が考えるベストシナリオだ。さっそく貯金を始めよう。

 痛いのはいやだから、モルヒネはたっぷり盛って欲しい。

 できればマリファナも。


肉食女子

わが母校は、伝統的に女子がキラキラ輝いて、男子が冴えない大学。 現在の山岳部も、 12 人の部員を束ねる主将は ナナコさんだ。 でも山岳部の場合、キャンパスを風を切って歩く「民放局アナ志望女子」たちとは、輝きっぷりが異なる。 今年大学を卒業して八ヶ岳の麓に就職したマソ...