貧困家庭の子ども向け無料塾で、久しぶりにショウちゃんに会った。
いつの間にか中学生になっていたが、相変わらず勉強する気はない。
「あ~あ・・・つまんねえ」 何を聞いてもうわの空。
でも戦国時代に話を振ると、ショウちゃん俄然、生き生きする。福島正則、朝倉義景、今川義元、片倉小十郎、立花宗茂、北条氏康。知らない武将の名が次々に出てくる。戦国時代が舞台の3Dゲームにハマっているらしい。
「過去にタイムトリップして雑賀孫一に会いたい」目をキラキラさせて言う。
この塾、以前は子どもの居場所作りの色合いが強かった。ショウちゃんとも、よく廊下でサッカーをした。それが今や、元教師や大学生のボランティアが2時間みっちり勉強を教える場に。分数の掛け算も忘れた私には分が悪い。
子どもに居場所を提供するはずが、自分の居場所がなくなっていた。
ちょうど日経ビジネスonlineで、マンガ「ドラゴン桜」に登場する弁護士、桜木健二のインタビューを読んだ。「わが子を年収1000万円の社畜にするのか」という刺激的なタイトル。子どもと接する上でのヒントを見つけた。
〇教師の役割・・・かつては系統だった知識を生徒に教える授業方法だったが、今は知識がネット上にいくらでもある。今の教師の役割は、少しだけ先に人生を歩む先輩として、生徒の心に寄り添うこと
→一人ひとりの得意・不得意・行動のクセやモチベーションの発火点を正しく見極める
〇親の役割・・・親の時代の常識が、これからの時代に通用するわけがない。世の中が驚くようなスピードで変化している時代に、過去の常識は今の非常識。親の『よかれ』という思いは、子どものためにはならない
→「自分のアドバイスが子どもの役に立つなんて思うな」
→子どもがゲームにハマってもいい。好きなことに没頭する経験は、将来の集中力につながる。大人から見て「くだらない」「役立たない」と思うものでも、子ども自らが夢中になっているものを奪ってはいけない
→親が子どもに対してできるのは、体力をつけさせること。体力さえ備えておけば、いざ子どもが勉強しようと火がついた時の集中力も高くなる
〇多くの親が陥っているのは、自分に自信が持てないという罠。わが子の力を心の底から信じ切る、そのためには自分自身に自信を持つ
→「歳を取ったって、親になったって、人間はいくらでも成長できる。自分を高めろ!自分にかまけろ!それが、子どもを伸ばす唯一にして最高の方法だ」
私がショウちゃんに英語や数学を教えるよりは、そのまま彼の大好きな戦国時代を極めてもらった方が、何者かになれる気がする。
勉強していい学校に入り、いい会社に入れば一生安泰。そんなロールモデルがなくなって大変だが、ネット世代は好きなことを武器に生きていける世代でもある。